トキリマメ         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

    
トキリマメ マメ科タンキリマメ属
標準和名:オオバタンキリマメ(大葉痰切豆)学名:Rhynchosia acuminatifolia

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■特徴・分布・生育環境
長さ2mほどにもなるツル性の多年草です。半日陰〜日当たりの良い林縁に生育しています。

葉は、三出複葉で、小葉は長さ8cm前後の卵型(葉の基部の方で幅が広くなる)で、葉質がやや薄く葉先は鋭三角形状です。

花は初秋〜秋早くに咲き葉腋に房状に数個つけ、小さくて長さ8mmほどの細い筒状で、黄色の花冠は小さく開いています。

大きな特徴は、マメ果の色が晩秋に鮮やかな赤色に熟すことです。
マメ果はサヤエンドウのような形で長さ1.5cmほどです。晩秋に裂開して黒色の径5mmほどの偏球形の種子を出します。

この仲間(同属)を代表するタンキリマメは、このトキリマメにとてもよく似ています。
トキリマメの小葉は卵型(葉の基部の方で幅が広くなる)ですが、タンキリマメの小葉は倒卵型(葉の先の方で幅が広くなる)〜菱形であることで区別できます。
なお、見慣れないと難しいところがありますが、トキリマメの小葉はやや薄いのに対して、タンキリマメの小葉はやや革質で毛が多い。
  
本州の宮城県以西から朝鮮半島に分布します。
多摩丘陵では、時々見かけますが個体数は多くはないようです。
里山では、ツル植物は植栽した幼木の生長を妨げるために除伐されることが影響しているかもしれません。

■名前の由来
「トキリマメ」の名前の由来はよくわかっていません。
標準的な和名は「オオバタンキリマメ(大葉痰切豆)」とされることが多いようですが、「トキリマメ」の名の方が一般的になっています。
果実に痰(たん)を切る作用があるという俗説から「タンキリマメ」と名付けられていますが、薬効は確認されていません。

■文化的背景・利用
万葉集や多くの和歌集には詠われていません。文学的にも記載はないようです。多くの本草書にもその名は現れていません。
ただし、万葉集に「マメ」が現れていますが、これはヤブマメであるとされています。

■食・毒・薬
マメ果も含めて食用にも薬用にも利用しないようです。有毒であるという報告もないようです。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵には、それぞれ別属ですがマメ科の蔓(ツル)性の草本で葉が三出複葉であるところがやや似ているノササゲツルマメヤブマメヤブツルアズキトキリマメタンキリマメの自生を確認していますが、イタチササゲノアズキは未確認です。

他に、クズもツル性ですが、草姿も花もとても大型で円錐塔状の花序の様子もかなり異なります。

ノササゲでは、マメ果が濃紫色に熟すのが特徴です。また、頭花は、長さ2cmほどの細い筒状で、基部の筒状のガクの部分(ガク筒)が半分ほどもあって淡緑色で、その先が淡黄色の花弁になっていて先が小さく開いているのが特徴です。
ツルマメでは、ダイズの原種とされ、花が径5mmほどととても小さく花冠はほぼ円形で淡紫色で、何よりもマメ果が茶褐色の毛に覆われていて「枝豆」にそっくりなことが特徴です。
ヤブマメでは、花は筒状で薄い紫色で、花冠は口紅をさしたように淡赤紫色から淡紫色になるのが特徴です。三出複葉の小葉は葉先が三角形状の卵型です。地下に閉鎖花をつけ、地中にも果実をつけるのも特徴です。ただし、抜かないといけないので確認は困難です。
ヤブツルアズキでは、アズキ(小豆)の原種とされ、花冠が黄色で径1.5cmほどあり、マメ果が細長い筒状なのが特徴です。花がよく似たノアズキでは、マメ果はサヤエンドウのように扁平です。花は、ヤブツルアズキでは中央の花弁(翼弁と竜骨弁)がほぼ円形になっていますが、ノアズキでは、片側に偏っています。ただ、慣れないと花の形態での区別は結構困難です。
トキリマメでは、花は黄色ですが長さ8mmほどととても小さく目立ちません。マメ果が晩秋に鮮やかな赤色になるのが特徴です。花もマメ果もタンキリマメにそっくりですが、トキリマメでは葉の基部の方で幅が広くなっているのに対して、タンキリマメでは、葉先の方で幅が広くなっていることで区別します。
タンキリマメは、花もマメ果もトキリマメにそっくりですが、トキリマメでは葉の基部の方で幅が広くなっているのに対して、タンキリマメでは、葉先の方で幅が広くなっていることで区別します。 
イタチササゲでは名前はノササゲ似ていますが、葉は羽状複葉で、花色は最初淡黄色で後に黄褐色になり、またマメ果はやや扁平で長さ10cmほどと長く、ノササゲとは大きく異なります。
ノアズキでは、ヤブツルアズキと同様に花冠が黄色で径1.5cmほどありますが、マメ果がサヤエンドウのように扁平なのが特徴です。花がよく似たヤブツルアズキでは、マメ果がほそ長い筒状です。花は、ヤブツルアズキでは中央の花弁(翼弁と竜骨弁)がほぼ円形になっていますが、ノアズキでは片側に偏っています。ただ、慣れないと花の形態での区別は結構困難です。    
  
写真は「花と葉」、「花」、「葉と果実」、
「赤熟した果実」と「黒い種子」の4枚を掲載
トキリマメ
トキリマメの花と葉
トキリマメ
トキリマメの花
トキリマメ
トキリマメの葉と果実
トキリマメ
トキリマメの熟した果実
トキリマメ
トキリマメの種子