イチリンソウ (一輪草)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

イチリンソウ (一輪草) キンポウゲ科イチリンソウ属
学名:Anemone nikoensis

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■特徴・分布・生育環境
草丈20〜25cmほどの小さな多年草です。全草が有毒です。
半日陰になるような疎林の林床〜林縁を好みます。

茎を1本立てて、茎頂に細かい深い裂れ込みがある葉を3枚輪生状につけます。
春に、その中心から花茎を1本ほぼ直立させて径4cmほどの可憐な花を1輪つけます。
花被片(ガク片で花弁はない)は通常5枚で白色です。しばしば花被片の裏側が淡いピンク色になります。

根生葉(地際の葉)は多くの場合ありません。
葉は、1〜2回三出複葉で、小葉は羽状に深裂し、裂片にも欠刻が入ります。

早春に芽を出し、春に花をつけ結実させて、初夏には地上から姿を消します。いわゆるスプリング・エフェメラル(春の妖精)と呼ばれる1群の植物のひとつです。春の一瞬にだけ地上に現れて可憐な花をつけるので「春の妖精」です。
学名(属名)の「Anemone」から判りますように園芸栽培されるアネモネも仲間です。
  
日本各地から東北アジアに広く分布します。
多摩丘陵では、この20年ほどの間(2010年現在)に急速に個体数を減らしていて、現状ではごく限られた地域だけで少ない個体数が確認されるだけになっていて、地域絶滅が危惧されます。

■名前の由来
1本の花茎の茎頂にひとつだけ花をつけるので「イチリンソウ(一輪草)」です。

ただし、同じように1本だけ花茎を立てて花を一輪だけつけるのは本種だけでなく後述する「キクザキイチゲ」や「アズマイチゲ」など多くあります。

■文化的背景・利用
万葉集やその後の多くの歌集や句集などには、知られた詩歌はないようです。
江戸時代に貝原益軒が編纂した「大和本草」や、「本草綱目啓蒙」にその名が現れています。

■食・毒・薬
全草が有毒です。むやみに摘んだりすると皮膚炎を惹き起し、誤って食べると胃腸炎を惹き起しますので注意が必要です。
キンポウゲ科の植物は、ほぼ全てが有毒です。

ただ、後述するニリンソウの葉は、僅かに毒成分を含みますが火を通せば毒性はなくなり、美味しい山菜として食べられます。
ただし、猛毒のトリカブトの仲間の葉によく似ているので注意が必要です。

■似たものとの区別・見分け方
仲間(同属)に、以下のようにニリンソウ、キクザキイチゲ、アズマイチゲやシュウメイギクなどがあります。

〇草姿が似たニリンソウは葉の裂れ込みが少ないこと、花径も2cmくらいと小さく、何よりも花を通常二つつけることで容易に区別できます。
〇同じく草姿や葉が似ているキクザキイチゲでは、花被片(ガク片)の数が8〜13程度と多いことで区別できます。
〇草姿や花が似たアズマイチゲでは、葉に細かい裂れ込みがなく茎葉が下方に垂れ気味になることで区別できます。

多くの園芸品種が作出されているシュウメイギクは、古い時代に渡来した外来種とする説が多いようですが、多摩丘陵では、時々半野生化しています。    
  
写真は「花」(1)、「花」(2)、「葉と蕾」、
「花と葉」と「芽生えの新葉」の5枚を掲載
イチリンソウ
イチリンソウの花(1)
イチリンソウ
イチリンソウの花(2)
イチリンソウ
イチリンソウの葉と蕾
イチリンソウ
イチリンソウの花と葉
イチリンソウ
イチリンソウの芽生えの新葉