里山とは −遠い昔から人の生活と密接に結びついてきています−

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■1.里山とは−里山の定義

■2.里山の利用

■3.里山林は「二次林」

■4:里山の荒廃

■5:里山の復元とビオトープ
 里山風景

1:里山とは−里山の定義
 
■広義には、人の生活圏の周辺の低山地から田や畑などの耕作地、溜池や小川などの全体を意味しています。遠い昔から、人の生活に密接に結びついてきています。
人の手によってよく手入れされ維持管理されている林地・草地・湿性地などの多様な植物相に、多くの種類の小型哺乳類・爬虫類・両生類・昆虫類や野鳥などが棲息し、独自な生態系を形成しています。

■狭義には、人の生活圏の周辺の低山地の林地や竹林地を意味することもあります。里山の林地は、(本州中部の暖温帯では)コナラやクヌギを中心とした落葉樹を中心とした林(森)や竹林で構成されています。シラカシやアラカシなどの常緑広葉樹は除伐されています。  
このような林地は、萌芽力の強いコナラやクヌギの性質を生かして、概ね30年周期で伐採して薪炭やシイタケなどの栽培原木として使用され、持続可能な循環型に利用されてきています。
たらの芽  
2:里山の利用  
 
■里山、特に狭義の里山林は、多様な形で人の生活に利用されてきていて、重要な存在として維持管理されてきています。

・薪(マキ)の採取−エネルギー革命(電気・ガス・石油製品の普及)までは、重要な燃料源でした。

炭と炭焼き−上述の通りは燃料革命までは重要な燃料源でした。また、近年では竹炭の消臭や土壌改良などの効能が再評価されています。

シイタケ栽培などのキノコ栽培

竹製品シノ竹製品の作製と利用 −籠、ザル、竹ホウキ、農業用用資材、提灯、傘、物干し竿・・・

タケノコの採取

・採集した落ち葉による腐葉土堆肥作りー化学肥料が普及するまでは重要な肥料源でした。

■また、広義の里山としては、

・食べられる野草や木の葉、木の実やキノコなどの採集

などにも広く利用されてきています。
 里山林風景

3.里山林は「二次林」
  
■狭義の里山林は、いわゆる「二次林」です。
遠い昔に、人の手によって、もともとの原植生が除伐されコナラやクヌギなどの落葉広葉樹を中心とした林(森)に作り変えられたものです。  
もともとの植生、すなわち原植生に対して二次的に成立したものなので「二次林」です。  
本州中部暖温帯では、もともとの原植生は、スダジイ、シラカシやアラカシなど(海岸に近い地域ではさらにタブノキなど)の常緑広葉樹を中心としていたと推定されています。  
 
[循環型利用]  
里山林のコナラやクヌギなどは、薪の採取や、炭焼の原木やシイタケ栽培の原木とするために定期的に伐採されます。  
上述の通り、コナラやクヌギなどは萌芽力が強く、切り株からすぐに萌芽して成長し始め、30年ほどで元どおりの林に戻ります。  
このような特性を人が利用して二次林を成立させ、循環させて利用してきた林地(森)が里山林です。
このように、伐採して萌芽させて、再びもとの林に戻すことを萌芽更新と言います。切り株からは何本も萌芽して株立ち状になりますが、そのままでは細いモヤシのような樹木になってしまうために、最終的に1本だけを残して他の株を除伐します。
これをもや分けなどと呼びます。  
萌芽更新だけでなく、崩壊地や常緑樹などの伐採跡地には植林を実施して、里山林として維持管理されてきています。

[植生遷移の管理]
里山林のような二次林は、放置しておくと(本州中部の暖温帯では)シラカシやスダジイなどの耐陰性樹種(日照が少なくても(実生から)生育していくことができる樹種)が徐々に優勢となります。これを植生遷移と呼びます。
植生遷移が進むと最終的にはコナラやクヌギなどの陽樹を追い越して常緑広葉樹が優占種となり、(本州中部の暖温帯では)最後には常緑樹中心(優占樹種)の林(森)となってしまいます。
したがって、これらの常緑種は必要に応じて除伐され、里山林として維持管理されます。

[竹林の維持管理]
上述のように大変有用材であった竹を利用するために、里山林のところどころには竹林が維持管理されています。
タケノコの採取のためのモウソウ竹の竹林(稈(茎)が肉厚なので竹炭焼きにも使われます)、やマダケの竹林(稈(茎)の肉部が薄くて軽いので、傘、竿、ホウキや農業用資材などいろいろな用途に使われます)が維持管理されています。
竹林の竹は、随時伐採し、さらに竹を“材”として利用するために重要な枝払いを施します。竹は成長が早く萌芽力が強いので、放置しておくと密集し過ぎ、また枯損竹が折り重なって荒れていってしまいます。
 ジュウニヒトエ

4:里山の荒廃

人の生活や営為に密接に結びついてきていた「里山」ですが、昭和30年代に始まったエネルギー革命(電気・ガス)や化学製品の登場(化学肥料やプラスティック製品など)によって、里山の持つ経済的価値が相対的に低くなり、多くの里山が放置されるに至ってきています。
また、それとともに、里山の棚田などの耕作地を維持する後継者も不足するに至り、耕作放棄地も増加してきています。

里山林や畑・果樹園には、笹(関東地方では稈(茎)径2cmを越え高さ3mにも及ぶアズマネザサ)や竹が侵入して密集し、樹木の生育を妨げるだけでなく、地下茎が先に水を吸い上げてしまうために樹木の立ち枯れまで引き起こしています。
また、下層植生は貧しくなり、落葉樹林に適応して生育していた草本類も消え豊だった生態系も衰退するにいたっています。
さらに、植生遷移が進み、カシ類やシイ類などの常緑樹が優占樹種となり、暗い林(森)となってきていて、極端な場合には(林床に陽光が届かないために)下層植生が滅びて、その結果表土の流出を起こしている場合もあります。
 ムラサキサギゴケ

5:里山の復元とビオトープ

近年に至り、里山の持つ生態系としての重要さなどが再認識され、ボランティアを中心に荒廃した里山の復元活動が各地で展開されています。
荒れてしまい植生遷移も進んでしまった里山林の復元を始め、耕作放棄された田や畑、あるいは棚田などの復元と耕作などが進められてきています。
また、近年、「ビオトープ」という概念が普及して、各地でビオトープ作りが行われるようになってきています。
ただ、日本では「ビオトープ」は、水辺やその周辺の水湿性地の生態系の復元を意味していることがほとんどです。
広い意味での「ビオトープ」は、林地、草地、小川、溜池、田や畑などの全体を意味していて、多様な生態系を育む自然環境を指しています。
その意味から、広義の里山の復元はビオトープ作りであると言えます。

さらに、炭の持つ特性が再評価され、廃れてきていた炭焼きも行われるようになってきています。

里山の復元は、先ず植生や土地利用の概略調査を実施し、今後の復元ヴィジョンに沿ってゾーニングして各ゾーンごとの施業計画を立案して順次実施していきます。
田や水湿性地の復元には、水田耕作の知識や経験が必要です。
林地の復元は、多くの場合侵入しているササや竹の除伐から始まります。ササや竹は地下茎を引いているために生命力が強いので、通常は3年ほどは除伐を続ける必要があります。
また、カシ類などの常緑樹が優占してきている場合には、それらの除伐を実施します。
さらに、笹や竹を除伐した跡地や常緑樹の除伐跡地には、必要があれば植林を行います。

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