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見たい表の行をクリックすればその項の位置にいけます。 ■1.植生概況の調査 ■2.ヴィジョンの策定とゾーニングの実施 ■3.施業計画の策定と施業 ■4:立木の伐採 ・伐採−架かり木 ・巻き枯らし ■5:竹の伐採 ・竹の枝払い ■6:植林 ・育苗から坪刈り・枝詰めなど ■7:「萌芽更新」と「もや分け」 ■8:竹林の維持管理 ■9:カントリー・ヘッジと粗朶(そだ)垣 ここでは里山と里山林の施業の方法や手順について解説しています。スギやヒノキなどの人工林などはその対象とはしていません。 「人工林」は、1950年代末ごろから推進された林野庁による拡大造林計画に沿って、それまでの林地を皆伐して、スギやヒノキを植林したと推定される林地です。 人工林は、良好な材を生産するための施業が行われます。苗木の成長を助ける下刈り、通直な材を得るための枝打ち、や良好な樹木を選抜する間伐などの施業が行われます。 ■1.植生概況の調査 先ず、その対象地域の植生概況の調査を行います。 なお、里山では、対象区域の植生の密度や被度などを測定するといった(どちらかと言えば)学術的な調査や貯木量などを把握する調査などは必要がないので植生概況を把握するだけで充分です。 よく維持管理されている里山では、改めて施業計画を立案する必要はないので、植生概況の調査を敢えて実施する必要はありません。 「植生概況」の調査における着眼点は、概ね以下です。 ○広義の里山では、 ・休耕田などの水湿地 ・放棄された果樹園地(クリ、ウメやカキなど) ・放棄された畑地 である区域が残されているかどうか。 ○林地では、 ・ササや竹などが侵入しているかどうか。 ・常緑樹(シラカシやヒサカキなど)が優占してきているかどうか。 ・広葉樹林(コナラやクヌギなどが優占している里山林)ではあるが下層に低木が密生し始めているかどうか。 ・広葉樹林ではあるが放棄された畑地に成立した林地であるかどうか。樹齢が15〜30年生(幹径10〜15cm前後、樹高15m前後)ほどのイヌシデ(やアカシデ)、エゴノキ、ミズキ(やクマノミズキ)やアカメガシワなどからなり、クロモジなどの低木が下層に密に生育していることが多い林地。 ・スギやヒノキなどの人工林(通常、50年生ほど)の区域があるかどうか。 ○竹林地では、 ・まだよく手入れされている(枯損竹などがなく間隔が120cmほどに間伐されている)竹林。 ・竹が密に生育し、枯損竹などが折り重なっている竹林。 これらをもとに、概略の地図を作成します。 ■2.ヴィジョンの策定とゾーニングの実施 作成した概略の地図をもとにして、どのような里山や里山林に復元するかのヴィジョンを策定して、それに沿ってゾーニングします。 すなわち、ゾーニングとは、 ・水田耕作を復活させる区域 ・水湿性地として維持管理し、水棲小動物・魚類や昆虫(トンボやホタルなど)などを復活させる区域 ・果樹園地として維持管理する区域 ・畑地として復活させる区域 ・里山林(コナラやクヌギなどの明るい広葉樹林地)として維持管理する区域 ・訪問者が自然と触れ合うことができるようにする区域 ・自然林として当面は手を入れず、人の立ち入りを制限する区域−「保全区域」 ・竹林として維持管理する区域 ・スギやヒノキなどの人工林である区域(大径木が多く専門家でないと危険で伐採できません) といった「ヴィジョン」を策定して、それに沿って区域を設定することです。 そのゾーニングに沿って、里山と里山林の復元構想地図を作成します。 ■3.施業計画の策定と施業 ゾーニングした区域ごとに施業計画を策定します。「施業内容」、「施業時期」や「施業手順」を決めて施業します。 (1)水田を復活させる場合には、稲作などの技術や知識のある方がいることが前提となります。通常、有機栽培などに興味がある方々でグループを編成して実施します。 (2)畑地を復活させる場合には、ササや竹が侵入している場合には先ずその除伐を実施します。また、カラスザンショウ、クサギ、アカメガシワなどの先駆樹種の幼木も含めて草刈を実施します。 なお、草刈は通常刈払機を使用します。鎌などの道具でも可能ですがササや幼木が混じっている場合には、普通の鎌や中厚鎌では「歯こぼれ」を起こして使いものにならなくなるので注意が必要です。 このような場合には、刃に厚みがある「厚鎌」や刃の基部が肘のように湾曲していて柄の長さが1.2mほどもある「ナタ鎌」や「刈払い鎌」などを使用します。 面積が広い場合には、中腰での作業になる「厚鎌」などの柄の短い鎌では疲労が激しくなり、先ず無理です。 ササは可能な限り、地際で伐採します。特に、アズマネザサなど竿の太いものでは地際で伐らないと残った竿が突き出していて危険です。 ササや竹は、地下茎を引いていて生命力が強いため、3年程度は継続して年数回は除伐する必要があります。 (3)果樹園地として維持管理する場合には、上記の畑地の場合と同様に、侵入しているササや幼木とともに草刈を施し、徒長枝や込み入り過ぎた枝の剪定を行います。 (4)水湿性地として維持管理する場合には、 (a)既に(浅い)池沼などがある場合には、 岸辺に切り立った土手がある場合には、上部を保全(人が入れないようにするなど)します。その土手が粘土質であれば野鳥のカワセミが営巣する可能性があります。 岸辺が泥湿地になっていて、増水時にはあふれるような場合には、その岸辺にゴロタ石(野石)を並べて岸辺を固め、湧水の流入口と流出口を整備します。これは増水時にオーバーフローして周囲は泥湿地と化すのを防ぐとろもに、観察や作業がし易いようにするためです。湧水の流入口や流出口に砂利を敷き詰めます。流出口は、深さ20cmほど掘り下げて細かい砂利などを敷き詰めて「浸透桝」にするのが普通です。 (b)水田の跡地と推定される場所で、ある程度継続的に湧水が流入している場合には、(浅い)池沼を作ることができます。 まず、流入している湧水を脇に逃がす溝を造成して、水湿性地をある程度乾燥させます。同時に池の場所と形状・深さを決めて掘り下げ、池を造成します。上述のように、池の周囲にゴロタ石(野石)を並べて岸辺を固め、観察や管理作業がし易いようにします。湧水の流入口や流出口に砂利を敷き詰めます。流出口は、深さ20cmほど掘り下げて細かい砂利などを敷き詰めて「浸透桝」にするのが普通です。 池の造成を終えたら、脇の溝に逃がしていた流水を流入口へ導き直し、造成した池に水を満たします。 なお、湧水などがある程度継続的に流入していない場合には、池沼などを維持管理することは無理です。湿性の高い区域としてミゾソバやガマなどの湿性地を好む植物の保全区域として維持管理することが普通です。 ・ヨシなどが繁茂し過ぎている場合には、ヨシ原として残す場所を決めて、残りは除伐します。ヨシ原は、浅い池沼では昆虫の幼虫や魚類の隠れ家などになり、また産卵場所にもなります。 また、ある程度の広さがあれば野鳥の棲みかや営巣場所になる可能性があります。 水辺のところどころに、ショウブやホタルイなどを植栽します。また、周辺の湿性地には、ムラサキサギゴケ、セリやオモダカなどを植栽します。 ・水が綺麗であれば、カワニナとホタルの幼虫を放します。ただしその場合、ザリガニはカワニナの天敵なので駆除する必要があります。 (5)里山林(コナラやクヌギなどの明るい広葉樹林地)として維持管理する場合には、 ・先ず、侵入しているササの除伐を実施します。ササの除伐は、普通の鎌や中厚鎌では刃こぼれを起こすので厚鎌や柄の長さが1.2mほどもある「ナタ鎌」や「刈払い鎌」などを使います。機械(刈払機)を使用するほうが作業効率は高くなります。 また、上述の通り地際で伐ることが望ましいため、一度高さ2〜5cmほどで刈り、その後地際で再度刈ります。機械のほうが容易です。 ・隣接する竹林から竹が侵入している場合には、竹を除伐します。 ササや竹は、地下茎を引いていて生命力が強いため、3年程度は継続して年数回は除伐する必要があります。 ・次に、常緑樹を伐採(立木の伐採)します。 ・「常緑樹が優占している林地」では、一度全ての樹木を伐採(皆伐)して植林します。 ・「放棄された畑地に成立した林地」である場合も、一度全ての樹木を伐採(皆伐)して植林します。 ・「放棄された竹林」である場合も、一度全ての竹を伐採(皆伐)して植林します。ただし、皆伐した後3年ほどは、タケノコ倒しなどを継続して地下茎を腐らせます。 (6)訪問者が自然と触れ合うことができるようにする区域には、散策路(観察路)を整備します。斜面には、伐採材を利用して階段を設置します。 また、林地などへの立ち入りを制限するために散策路(観察路)の脇にはカントリー・ヘッジあるいは粗朶(そだ)垣を設置します。 (7)竹林として維持管理する区域については、その項を参照ください。 ■4.立木の伐採 [注1]幹径40cmを越えるような大径木や傾いている木、あるいは急な斜面の木などの場合は、経験のない人には極めて危険なので、専門家にまかせます。 [注2]小径木といえども、全体では相当な重さなので、伐倒木の下敷きになると大怪我をする危険があります。予期せぬ方向に倒れる恐れもあるので、木の高さの半径以内に人が入らないようによく注意するなど安全管理に万全を期してから伐木します。 (1)伐採の時期:通常は、落葉樹では葉を落としていて水を余り上げていない冬に行います。常緑樹でも同様です。その方が相対的に軽くて後処理し易いからです。 ただし、シイタケ栽培の原木を得るためにコナラやクヌギなどを伐採する場合には、葉をつけたままのほうが乾燥させ易いので初秋頃に行います。 (2)伐採−チェーンソーやノコギリによる伐倒 (a)先ず、倒す方向を決めます。 ・周囲の樹木の状況を確認して「架かり木」(伐木が他の立木に引っ掛かって倒れない状態)にならない方向を確認します。「架かり木」を外すことは、立木の伐採よりも危険です。特に二又に分かれた木に挟まったりした場合などは、外すことはまず無理なので注意が必要です。 「架かり木」の外し方は後述します。 ・緩斜面(上述の通り急斜面では危険が大きいので専門家に頼みます)では、通常は横方向または斜め下方に倒します。山側に倒すと滑り落ちてしまうことがあり、作業者が巻きこまれることがあって危険です。また、後処理が難しくなる恐れもあります。谷川に倒すと、時に地面に強く当たって跳ね回ることがあり作業者に危険です。 (b)倒す方向をコントロールするために、普通はハシゴをかけて上部に長いロープを縛りつけ、倒す方向に強く引っ張っておきます。低い場所を引っ張っても効果ありません。ただし、細いロープでは切れることがありかえって危険なので、太くて強いロープやワイヤー・ロープを使用します。 (c)倒す方向にクサビ型に切り口(受け口)を入れます。先ず水平に幹径の1/4くらいまで切り、その斜め上方から30度くらいの角度で切っていってクサビ型になるようにします。 なお、切る高さは、中径木以下の場合ノコギリを使用する場合がありますが、その場合はもっとも力を入れ易い高さ1mくらいの場所にします。伐倒してから、再度なるべく地際に近いところで切ります。 (d)「受け口」の反対側から切り口(追い口)を入れ、慎重に切っていきます。「追い口」は「受け口」の高さの半分ほどの位置にします。中径木など太い木の場合には、木の自重で追い口が狭まって、チェーンなどが挟まってしまうため「クサビ」を用意しておいて、追い口に打ち込んで切り口を確保します。「クサビ」は木の重心を倒す方向に動かす効果もあります。 (e)木が倒れ始めたら、時に伐倒木の根元が跳ね上がることがあるので素早く離れます。相当な重さと加速度なので大変危険です。 (f)「枝払い」−伐倒したら、その木の枝を切り落とし(「枝払い」)ます。ただし、伐倒木の下敷きになっている枝を安易に切るとバネのように跳ねて大変危険です。そのような枝は枝先から少しずつ切っていきます。 枝払いをした枝は、大枝も含めて「カントリー・ヘッジあるいは粗朶(そだ)垣」作りに使用します。 また、伐採した樹木の幹や大枝は、炭材などにも利用します。 そうでない場合は、できるだけ小さく「玉切り」(幹の切断)して集積して腐らせます。細い枝や葉もできるだけ小さくして集積して腐らせます。その方が早く腐ります。大枝のまま積み重ねて放置しておくと枯れ枝となるだけですし、邪魔な上に危険でもあります。 (g)「かかり木の処理」は、立木の伐採よりも危険な作業です。細心の注意を払う必要があります。かかり木の状態が悪く、外すのは困難である場合には専門家に頼みます。素人判断での作業は大変危険です。 ・基本的には「かかり木」は外す方向に回転させて外します。2m前後のカシの棒などを使ってテコの原理を使います。棒やフェリングレバーなどで伐倒木の根元を回すこともありますが、木廻しベルト(ハスクバーナ)などで棒を固定して回す方がベターでしょう。ただし、一挙に回すと棒が跳ねて大変危険です。少しずつまわしていき、外れそうになったら素早く退避します。 伐倒木にノミなどで穴をあけて棒を差しこんで回転させる方法もあります。 ・「牽引器具」を使う方法もあります。伐採木の幹にピンを打ちそのピンにロープやベルトを固定して幹に何回か巻きつけておいて、ロープを他の立木に一度ひっかけるなどしておいて安全な場所を確保し、その場所で牽引器具で牽引して回転させます。 ・径10cm以下の小径木であれば、伐倒木の根元にロープを縛りつけて皆で引っ張れば外れることがあります。 ただし、以下の方法は非常に危険なので絶対に避けてください。 ・「かかられている木の枝切り」 ・「かかられている木の伐倒」 ・「伐倒木の木元の玉切り」 ・「伐倒木を肩に背負って動かす」 ・「かかり木の放置」−やむを得ずそのままにする場合は、危険な周囲を立入禁止にする具体的な措置をとります。 (h)「巻き枯らし」: ・「巻き枯らし」は、ナタ等を使って樹皮と形成層の部分を10cm幅程度に環状に剥ぎ取り、養分の供給を絶つことによって、徐々に立ち枯れさせる方法です。したがって、枯れるまでに長い時間(1年ほどは必要です)を要します。 ・「巻き枯らし」では立ち枯れ状態となるので、強風や台風はもとより、ちょっとしたはずみで倒れる恐れがあって大変危険なため、人が出入りすることがある里山ではまず使用しません。 また、立ち枯れるために枯れ木になってしまい、(乾燥材とは異なり)材を利用できません。その意味からも、資源を循環して利用する里山にはそぐわない方法です。 ・なお、近年では、間伐遅れの人工林(植林地)で「巻き枯らし」がよく使われるようになってきています。いわゆる「巻き枯らし間伐」です。 間伐作業は危険をともなう上に、近年では間伐を行う人手が充分に手当てできないことから、間伐遅れの人工林が増えてきています。その一方で「巻き枯らし」は比較的安全かつ容易に実施できるため、経験の浅いボランティア等であっても施業できることが「巻き枯らし」がよく用いられるようになってきた要因のひとつです。 また、人工林の間伐は、混み合い過ぎた木々を間引きして、林冠を広げて樹木の成長を促し、さらに林床に陽光を入れて下層植生の生育をも促して表土の流出を防ぐことが主な目的であるために、「巻き枯らし間伐」による立ち枯れ状態であっても、その目的は果たせるからです。それでも何年か経過して倒れた枯木の後処理は必要です。 ・「人工林以外で例外的に巻き枯らしが有用な場合」: 原植生の保全のために、侵入してきている特定の外来(有害)樹種のみを狙い撃ちして除伐する目的の場合などには有用な方法です。 伐採すると環境が急変して植生に悪影響を及ぼす恐れが高いために、原植生環境をある程度維持しながら徐々に立ち枯れさせていく必要がる場合には「巻き枯らし」が適切な施業となるのです。 なお、最近では、幹に傷をつけて、そこに除草剤などを注入して木を枯らす方法(薬剤処理)もとられていますが、環境に良い方法とは言えないようです。 ■5.竹の伐採 竹は相対的に細いので簡単に伐採できるように見えますが、竹特有の性質に合わせて伐採します。 (1)竹の伐倒 @先ず、重心の方向を見定めて、切った際に倒れる方向を確認します。 A倒れる側の根本から15cm〜20cmの高さのところ(力をいれやすい)に、径の1/4ほど切れ込みを入れます。切れ込みを入れておかないと、倒れるときに縦に割れる恐れがあり、また、そのまま切っていくと竹が傾き始めて、切り口が狭まりノコギリの刃が挟まってしまいます。 B竹は細いので心配ないように思いますが、斜面などでは時に倒した竹の根元が跳ね上がることがあり危険です。したがって、倒れる際の逃げ道を確保しておいてから、伐採にとりかかります。 C倒れる側の反対側から、切れ込みを入れた2〜3cm程度上で切っていきます。 D伐採直前に、倒す方向に人がいないことを確認し「倒しま〜す」などと声かけてから、最後のひと切りを入れて倒します。 E倒れ始めたら倒した竹の根元の跳ね上がりを避けて、2歩から3歩後ろにさがります。 竹林では「かかり木(竹)」になることが多いのですが、その場合は、肩にかついで反対側に引っ張ります。立木の場合とは異なり、竹はかなり軽いので下敷きになることはまずありません。太くて重い場合には、危険を避けて、面倒でも根元にローブをしばりつけて引っ張ります。 F倒し終えたら切り株を地際で切り倒します。切り株を残したままにしておくと、タケノコを採取したり、手入れする際に怪我をする原因になります。 (2)竹の枝払い 竹を伐採した場合には、竹材として活用(農業用材、や竹炭の原木用など)するにしても、集積して腐らせて廃棄するにしても、竹の枝を払っておくこと(「枝払い)は必須です。 伐採竹を廃棄するにしても、枝を残したままではかさばるだけでなく、竹の稈(茎)や枝が宙に浮いた状態になりなかなか腐らなくなります。また、竹は枯れると枝も含めて大変硬くなるのでそのままでは放置すると危険です。 (a)「竹材として活用する場合には、丁寧に枝払いをします。 ・「厚鎌」や「腰ナタ」を使用して(草刈鎌や中厚鎌の場合は熟練しないと刃こぼれします)、 ・先ず、右の写真のように竹の枝の下側に3度ほど切れ込みをいれます(こうしておかないと枝を払った際に竹の皮までめくれてしまい竹材が痛みます)。 ・次に、竹の枝の上側から鎌(ナタ)の“背中”で枝元を叩いて枝を払い落とします。慣れれば、軽く叩くだけで枝を払い落とせます。 ・こうすれば、通直で円滑な表面の竹材を得ることができます。 なお、枝元の下部の稈(茎)のふくれた部分の黒い個所に、のこぎりで切れ目を入れ、下方向に枝を押せば、比較的容易に綺麗に枝を払うことができます。ただ、この方法の場合には、稈(茎)の枝元の部分に少し出っ張りが残ることがあります。 (b)伐採竹を廃棄する場合には、竹材が痛んでも問題はなく、また材に枝元の部分が残っても問題はないので、多少乱暴な方法で枝を払っても構いません。 ・手早く枝払いしたければ、長さ1mほどの細いカシなどの棒を使う方法があります。右の写真のように棒で枝元を叩けば容易に枝を払えます。ただ、しばしば、竹の皮までめくれます。 ・「腰ナタ」などで、枝元を切り落としてもかまいません。 ・ノコギリしかない場合には、枝を稈(茎)とともに握って、枝元を切り落とすことで枝払いできます。 いずれの場合でも、面倒でも竹の先(梢)まで枝払いしておくことが肝要です。伐採したての際には竹の先(梢)は枝も含めて軟らかいので、そのまま放棄しがちですが、枯れるとやはり枝は硬くなって危険です。 ■6.植林 笹や竹の皆伐や常緑樹の除伐の跡地が広い場合には「植林」を実施します。 里山の場合は、通常、コナラやクヌギなどの落葉広葉樹を植林します。 「植林」には、育苗〜植え付け〜坪刈り〜下草刈〜つる切り〜枝詰めなど7年〜10年前後の継続作業が必要です。 植林の方法と手順は通常以下のようになります。 @「苗床」つくり ・幅1m、長さ3m〜5m位(もっと小さくてもよい)の苗床がいくつかできる広さの平坦地を50cmほど掘り下げ、ふるい等で石や根っこを取り除き、腐葉土などを混ぜます。 ・できるだけ東西方向に、幅1m、長さ3m〜5m位の苗床になるように高さ10cmほどに土を盛り上げます。南北方向にすると草が覆い被さる恐れがあり、苗の育ちが悪くなることがあります。 A播種 ・拾い集めてきた(コナラやクヌギなどの)ドングリを水に浸して選別します。浮かぶものは駄目です。 ・通常は春に、10cm〜20cm程度の間隔でドングリを播種します。苗床に浅い溝をつけ、そこに播種する方法もあり、筋播(すじまき)と言います。 ・その上を5〜6cm程度の厚さに覆土します。 ・さらにその上を、表面が乾燥し過ぎないように枯葉や枯れ草で覆います。 B育苗 ・苗床に苗が芽生えたら、生えてくる草を抜きます。 ・発芽率に応じて、弱い苗を間引きます。 ・およそ3年くらいで、30cm〜50cmほどに育ちます。ここまで育てば植林対象地に植林することができます。 ・通常、植林のおよそ1年前の春に根切り(苗の根を20cm〜25cmくらいに切って植え直します)をし、植え付けした際に活着しやすいようにします。南側斜面等で暖かくて肥沃な場所の場合には、この根切りを省略して、植え付けの際に根切りをしても活着します。 C地拵え(じごしらえ) ・簡単に言えば、植林地の整地作業です。低木や実生木、笹・草などを伐採・刈払します。 専門的には、植え付ける列だけを刈り払う方法(筋刈り地拵え)、植付ける周囲だけ刈り払う方法(坪刈り地拵え)、全面にわたって刈り払った枝等を巻き落として6〜10m間隔で枝等を巻き落とし、筋状に集積する方法(全刈り地拵え)や、全刈地拵えで巻き落とした枝等を焼き払う方法(焼払い地拵え)などがあります。 「巻き落とし」とは、「巻き落とし棒」(木の棒の先を二股にして先を尖らせたもの)で、枝等を一カ所に集めて、予想外の所へ落下しないように巻き落とし棒でたたいて小さくし、適当な位置に打っておいた杭に、落とした固まりを柵のようにして止めて筋状に配列することです。 里山では、通常「筋刈り地拵え」または「坪刈り地拵え」程度で充分です。 D植林(植え付け) ・通常春に、1.2m〜1.8m間隔で苗木を植える穴を掘ります。 ・苗木の枝が横に張り出している場合には、枝を切り戻しておきます。これによって、苗木の活着をよくし、植え付け作業を容易にします。 ・掘った穴に苗木を植え付けます。この際、半分ほど土を入れたところでしっかりと水をかけて根と土をなじませてから、さらに土を入れてその上から水を充分にかけます。 ・表土が乾燥し過ぎないように、根本を枯葉や枯れ草で覆います。 ・苗木を支える添え木を立てて、しゅろ縄などで苗木と結びつけて支えをします。 E下刈・下草刈・坪刈り・つる切り ・苗木は、植え付けた苗木の周囲に生えてくる草に負けてしまうため、毎年6月ごろ(晩春から初夏)と初秋に下草を刈ります。 ・この場合、機械(刈払機)を使うと誤って苗木まで刈ってしまう恐れが高いために、先ず「坪刈り」します。「坪刈り」は、苗木の周囲を半径40〜50cmほどに円形に、鎌で草を刈ることです。 ・苗木がつる草(クズ、ヘクソカズラ、カラスウリ、シオデ、ヤブガラシ等)に巻きつかれて枯れてしまわないように、それらのツル草を取り除き(つる切り)ます。この下草刈もツル切りも7年〜10年くらいは継続して実施する必要があります。 F「枝詰め」 ・植林木は、陽光を求めて枝を横に大きく張り出したり、下部から横枝を張り出したりします。 ・そこで、植え付けてから5年〜10年くらいの間は、横に張り出しすぎた枝の三分の一から半分程度を切り戻します。これを通常「枝詰め」と言います。これによって、まっすぐ上への成長を促します。 G「間伐」 ・植え付け後、10年〜15年くらいで3m〜5m位に成長したら、生育状態のよくない木などを中心にして2m〜3m間隔くらいに間引きします。 ■7:「萌芽更新」と「もや分け」 「萌芽更新」は、里山の樹木(主としてコナラやクヌギなど)を、薪の採取、炭材の切り出しやシイタケ栽培の原木の切り出しなどのために伐採し、その樹木の萌芽力を利用して、その切り株からそのまま萌芽させ、30年ほどでもとの林(森)に戻すことを言います。伐採して林を新しく蘇らせるので「萌芽更新」です。 コナラやクヌギなどは萌芽力が強く、切り株からすぐに何本もの株が萌芽してきます。これを株立ちと言います。 萌芽したら陽光を充分に届くように、毎年初夏や秋に、周辺の草や実生木を除伐します。また、初夏や初秋につる草などを取り除き(ツル切り)ます。 陽光が充分に入るようにするために、通常は萌芽更新は一定区域全体に対して行います。1本だけを萌芽更新することはまずありません。 萌芽して3年から5年ほど経過して2mほどに成長したら、強い株を6本ほど残して他の株を除伐します。右の写真は萌芽更新し、モヤ分けされたコナラです。 さらに10年ほど経過して、高さ4〜5m程になったら、強い株1本だけを残して他の株を全て除伐します。 このように、萌芽した株を間引いていくことを「もや分け」などと言います。 ■8:竹林の維持管理 竹材は前述の通り大変有用なものでした。しかし、里山の放置・荒廃とともに竹林も放置されて密集状態となり、また枯損竹が入り乱れて手がつけられない状況になっています。 竹林は、適切に維持管理すれば生態系としても需要な役割を担うだけでなく、また、美しいしいものです。 ・竹林は、唐傘(からかさ)をさして歩けるように維持管理すると言われます。すなわち、1.2mくらいの間隔になるように伐採します。「切ることが植えること」と言われるように、竹は地下茎で繁殖するので、適切に伐採することで健康な竹林を保つことができます。 ・一本一本の竹の寿命は十年前後と言われていますが、実際には台風や雪などによって、3年〜5年くらいで折れてしまうことが多いようです。特に、マダケなどはその傾向が顕著です。 ・したがって、そういった枯損竹を先ず除伐し、次に古くなった竹(表面が淡褐色を帯びてきているもの)から除伐していきます。 農業用資材、竹炭の原木や器具材などに活用する竹材は、丁寧に「枝払い」をしてから搬出します。 不要な伐採竹であっても、丁寧に「枝払い」をしてから適切な場所に集積して腐らせます。 なお、竹の枝葉は油分を含んでいるため、生のままでもよく燃えるので、可能な場所であれば「枝払い」した枝葉を焼却処分することもできます。 ■9:カントリー・ヘッジと粗朶(そだ)垣 伐採した木の枝(常緑樹の場合には葉をつけたままの枝)を利用して、散策路(観察路)や作業路の脇などに、人が立ち入ることを防ぐ目的などで設置するのが、カントリー・ヘッジや粗朶(そだ)垣(柵)です。また、小動物や昆虫などの冬越しや隠れ場所などにもなります。 基本的には、カントリー・ヘッジも粗朶(そだ)垣(柵)も同じ意味です。「ヘッジ」は、通常「生け垣」を意味します。一般には、 ・小動物や昆虫などの冬越しや隠れ場所などの機能も持たせる場合には、カントリー・ヘッジと呼ぶ事が多いようです。 ・垣根のように作る場合には、粗朶(そだ)垣(柵)と呼ぶ事が多いようです。 @上述のような意味のカントリー・ヘッジを作る場合には、平地では50cm前後の間隔で高さ1m前後の高さに杭を平行に並べて打ち込み、杭の間に太い枝から順に細い枝を積み上げます。傾斜地では谷側に杭を並べて打ち込み、杭の山側に同様に太い枝(葉)から順に細い枝を積み上げます。杭は伐採した木のある程度太い枝や細い幹で作ります。 A上述のような意味の粗朶(そだ)垣(柵)を作る場合には、伐採した木のある程度太い枝や細い幹で杭を作り、5本程度を50cm前後の間隔で一列に並べて打ち込み、伐採した枝(葉)を杭の間を縫うようにジグザグに差しこみます。この時、下から上に差し込んでいきます。隙間ができたら細い枝を同様に差しこみます。 |