ヤマノイモ(山の芋)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ヤマノイモ(山の芋) ヤマノイモ科ヤマノイモ属
学名:Dioscorea japonica

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■特徴・分布・生育環境   
ツル性の多年草で、日当たりのよい林縁などによくからみついています。

雌雄異株です。
葉は、普通対生(対になってつく)です。長さ8cm前後の細い三角形状の披針型です。
似たオニドコロでは、葉は互生(互い違いにつく)で、長さ幅ともに10cm前後の円心形で葉先は三角形状(全体としてハート型)です。

夏に、葉腋に雄花序と雌花序をつけます。花序は細いひも状で、雄花序は直立し、雌花序は下垂します。
花序につく花は、淡黄緑色でとても小さく目立ちません。

果実には、楕円形の翼があり果軸に連なってぶらさがります。この翼は晩秋から冬にも淡褐色になったまま残っているので結構目立ちます。

葉腋に径1cmほどの偏球形の「珠芽(むかご)」をつけるのが特徴です。「むかご(零余子)」は、栄養繁殖器官で、落ちて発芽して新しい株を作ります。
根茎はイモ状に肥厚し塊根状になります。ヤマノイモの塊根は「自然薯(じねんじょ)」と呼ばれ、古くから美味しい山の幸として親しまれています。

本州以西から朝鮮半島・中国に分布します。
多摩丘陵では、日当たりのよい林縁や植林の幼木などによくからみついています。ただ、掘りとられることが多く、成長した個体は少ないようです。

■名前の由来
文字通り、山にはえる「芋(いも)」で、イモ状の塊根やむかごを食用にすることからです。古来から栽培されていた「里芋(さといも)」に対比させて「山芋」とされたという説もあります。

■文化的背景・利用
平安時代の「本草和名」や「倭名類聚抄」に既にヤマノイモは現れていて、古い時代から身近な存在であったようです。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」に「ヤマノイモ」や「ムカゴ」の名が現れています。貝原益軒による「大和本草」にも現れています。
仲間(同属)の「ヤムイモ」は、古くから東南アジアなどで重要な食料であることはよく知られています。

■食・毒・薬
ヤマノイモの塊根は「自然薯(じねんじょ)」と呼ばれ、栽培されるナガイモとは区別されます。ともに「とろろ汁」などにして食用にしますが、「自然薯(じねんじょ)」のほうが粘りが強く美味しいとされています。
「自然薯」にはアミラーゼなどの酵素が多くまれていて、食物の消化吸収を助ける作用があります。また、カルシウムなど多くのミネラルやビタミン類を含み、疲労回復、ガンや糖尿病予防にも効果があるとされます。

塊根を乾燥させたものが生薬「山薬(さんやく)」で煎じたものに強壮・強精などの効能があるとされます。

春の新芽をテンプラに、あるいは茹でて和え物や汁の実などにします。
秋にムカゴを採取して、塩茹でやムカゴ飯などにします。

■似たものとの区別・見分け方
この仲間(ヤマノイモ属)は、似たものがほとんどで、全てツル性ですが、特徴が顕著なキクバドコロを除いては葉には変異もあり、見た目での区別は難しい。葉は、全体としては長さ5〜10cm前後の三角形状で基部は心形(ハート型)です。
多摩丘陵では、ヤマノイモオニドコロの2種はしばしば見かけますが、タチドコロはごく稀で、ニガカシュウ、ヒメドコロ、ウチワドコロ、カエデドコロやキクバドコロは(報告はありますが)未確認です。

ヤマノイモでは、明らかに葉の巾が狭く(幅3cmほど、時に5cmほど)、何よりも(普通)葉が対生(対になってつく)なので、葉が互生(互い違いにつく)である他種とは容易に区別できます。花被片は白色で平開はしません。また、葉腋にムカゴ(珠芽)をつけます。
オニドコロでは、明らかに葉の巾が広く(大きな葉では巾10cmほど)、葉の基部は横に張り出さないのが特徴のひとつです。花は緑黄色で径2mm前後と小さい。また、ムカゴ(珠芽)をつけないのが特徴のひとつです。
タチドコロでは、葉がオニドコロに似ていますが、葉の巾がオニドコロよりもやや狭く、また葉の基部が少し横に張り出しています。花色が黄色なのが普通で良い区別点ですが黄緑色であることもあるので注意が必要です。ムカゴ(珠芽)はつけません。
ニガカシュウでは、葉の形や大きさはに似ています。しかし、小さな花が淡い紫色を帯びていることで区別できます。また、オニドコロとは異なりムカゴ(珠芽)をつけます。名は「苦何首烏」の日本語読みのようで、別種のツルドクダミに似ていて、その漢字名が何首烏で根茎が苦いことからというのが通説です。
ヒメドコロでは、葉がオニドコロに似ていますが葉の巾がやや狭く、葉の基部が少し横に張り出しているのが特徴のひとつで、似たオニドコロとの区別点です。「姫」の名があるのはオニドコロに似ているが葉の巾が狭いという意味で、特に小型であるわけではありません。ムカゴ(珠芽)はつけません。花色は黄緑色で、よく似たタチドコロでは花色は普通は黄色です。
ウチワドコロでは、下部の葉が掌状に浅裂しているのが大きな特徴です。また、花は黄緑色で平開しません。ムカゴ(珠芽)はつけません。
カエデドコロでは、葉が明らかに3裂(葉の基部が明瞭に横に張り出す)しているか、掌状に5〜9浅裂〜中裂しているのが大きな特徴です。また、花色が黄橙色であるのも特徴のひとつです。ムカゴ(珠芽)はつけません。
キクバドコロでは、掌状に5〜9裂している葉の裂片が鋭三角形状であることで、上記7種とは容易に区別できます。ムカゴ(珠芽)はつけません。    
  
写真は「雄花」、「ムカゴ(葉は垣根のもの)」
と「葉(対生)」の3枚を掲載
ヤマノイモ
ヤマノイモの雄花
ヤマノイモ
ヤマノイモのムカゴ(葉は垣根のもの)
ヤマノイモ
ヤマノイモの葉