■特徴・分布・生育環境
日本固有種です。属としても日本固有です。
半日陰になるような疎林の林床〜林縁に自生する小型の多年草です。
草丈5〜10cmほど、花茎は20cmほど(時に30cmほど)になります。
春早く(多摩丘陵では3月下旬過ぎごろから)に、花茎を立てて、茎頂に花径3mmほどの小さな白い花を密な皿型(複散形花序)につけます。花は5弁です。とても小さいので見分けにくいのですが、花弁の間に隙間が目立ちます。また、正五角形にはならずに歪んでいることが多い。
葉は変異が多く、1〜3回羽状複葉(葉軸が分岐して各葉軸の左右に小葉を並べる)で、長さ5〜10cmほどです。小葉にも変異が多く、卵型や三角形状などですが、様々に深い裂れ込みが入ります。そのために、全体としては細かく分かれた葉という印象になります。
果実は長さ1cmほどのかなり細い紡錘型です。無毛なのが特徴のひとつです。
花時には、ヤブジラミやオヤブジラミによく似ていて注意していないと見過します。
このセントウソウでは、花期がヤブジラミやオヤブジラミよりも1ヶ月程早い。また、花茎の先の花序が、セントウソウでは密ですが、ヤブジラミやオヤブジラミではややまばらです。
これらや他の似たものとの見分け方や区別は、後述の通りです。
日本各地に分布します。
多摩丘陵では、ところどころで見かける程度です。
■名前の由来
名前の由来は判っていません。また、セントウソウの名が何時頃定着したのかもわっていませんが、少なくとも江戸時代にはこの名があったようです。
「仙洞草」や「先頭草」などの漢字を当てることが多いのですが、「セントウ」の音からの当て字であるようです。
この「先頭」から「セリ科の中では最初に花をつけるから先頭」などと言われることがあります。植物名を覚えるには便利ですが、どうも俗説のようです。
■文化的背景・利用
江戸時代の「物品識名」にその名が現れているとされます。ただ、ここに言うセントウソウと同一の種かどうかは確認できていません。
万葉集を始め多くの和歌等にも詠われていないようです。
■食・毒・薬
明確に有毒であるという報告はないようです。
薬用にするという報告も見当たりません。
このような場合は、食用にするのは避けるべきです。
■似たものとの区別・見分け方
上述のように、多摩丘陵では普通に見かけるヤブジラミやオヤブジラミによく似ています。
特に、花が開き始めの頃には、花や草姿など全体によく似ています。
○セントウソウは花期が早く、多摩丘陵では、3月下旬過ぎに花をつけますが、ヤブジラミやオヤブジラミでは、普通5月に入ってからです。
〇ヤブジラミやオヤブジラミでは、小さな花は茎頂にややまばらにつきますが、セントウソウでは小さな花は茎頂にかなり密に固まってつきます。
いずれにしても、セントウソウの果実はかなり細い紡錘型で無毛ですが、ヤブジラミやオヤブジラミの果実はころっとした紡錘型でカギ状の剛刺毛で覆われています。
〇やや似たヤブニンジンでは、小葉は、時にセントウソウの小葉(変異が多い)に似ていますが、ヤブニンジンの果実は細長い棒状なので容易に区別できます。
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写真は「全体」、「花」、「果実」、「花(果)穂」 と「葉」の5枚を掲載 |
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セントウソウの全体 |
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セントウソウの花 |
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セントウソウの果実 |
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花(果)穂 |
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セントウソウの葉 |
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