■特徴・分布・生育環境
大型の1稔生(果実を結ぶと枯れる)草で、草丈は1m〜2mになり、上部で枝を分けます。
「ウド」の名はありますが、ウコギ科のウドとは全く別種です。
初秋から秋にとても大きな傘型(複散型花序)の花序を茎頂につけ、白い小さな5弁花を多数つけます。
葉は大きく二〜三回羽状複葉(葉軸が2〜3回分岐して羽状複葉(葉軸の左右に小葉を並べる)をつける)ですが、大きいのでなかなか識別できません。
本州以西に分布し、日本固有種です。
多摩丘陵では、ごく限られた場所に少ない個体数しか確認できていません。
■名前の由来
壮大な様子を「猪(しし)」に擬(たと)えて、シシウドという命名ですが、ウコギ科のウドとは全く別種です。
セリ科には、他にも「ウド」の名がつく植物が多くあります。
「ウド」の名の由来ははっきりとしていないようです。茎が中空なので「虚ろ」木から転訛したなどの説はありますが定説とはなっていません。
中国の著名な薬学書であり、日本にももたらされた「本草綱目」には「一本の茎を立て、風に搖られず、故に獨活と曰う」という記述があるようです。
ただし、漢名の「独活」は中国ではもっと広い意味であったようで、ウコギ科の「ウド」に限らずセリ科のシシウドなども含んだ生薬の名前であったようです。ここから「ウド」の名があるようです。
なお、学名(属名)の「Angelica(アンゲリカ)」は「天使」を意味し、薬効が顕著であることからのようです。欧州では、広く伝染病や魔除けなどとして、古くからこのアンゲリカ属の植物を用いていたようです。
■文化的背景・利用
平安時代の「本草和名」や「倭名類聚抄」に現れる「和名 宇末世利(うまぜり)」はこのシシウドであるとされています。
江戸時代に貝原益軒によって編纂された「大和本草」には、「菜蔬類」として「ウド」の名があり、また「薬類」として「独活(ししうど」の名が現れています。
また、同じく江戸時代の「本草綱目啓蒙」の獨活(どくかつ)に「シシウド」の名が現れています。
万葉集を始めその後の和歌集や文芸などには、よく知られたものはないようです。
■食・毒・薬
漢方では根を乾燥させたものを生薬「独活」として、鎮痛、鎮静、血管拡張などに効能があるとしています。
なお、漢方ではウコギ科の「ウドの根」から調剤する生薬を「和独活」として区別しています。
■似たものとの区別・見分け方
別属ですが、ハナウドに似ていますが、花期が違うので容易に区別できます。ハナウドの花は春の終わりから初夏に咲き、シシウドの花は初秋から秋に咲きます。
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写真は「花」の1枚を掲載 |
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シシウドの花 |
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