ジシバリ(地縛り)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

   
ジシバリ(地縛り) キク科ニガナ属
標準和名:イワニガナ(岩苦菜)学名:Ixeris stolonifera

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■特徴・分布・生育環境
草丈は、花茎を立てる花時でもせいぜい20cmほどの多年草です。
日当たりのよい岩礫地〜半裸地を好みます。

岩礫地で見かけることが比較的多いので標準和名はイワニガナです。
一般には「ジシバリ」の名の方が普通です。

多摩丘陵では、花がよく似たオオジシバリはところどころで見かけますが、ジシバリ(標準和名:イワニガナ)は余り見かけません。

花茎以外には茎を立てず、地面を這うように伸ばします。

後述するようにこの仲間(ニガナ属)は似たものが多いのですが、ニガナジシバリ(標準和名:イワニガナ)オオジシバリの自生を確認できています。
ノニガナカワラニガナホソバニガナと、ニガナの変種であるシロバナニガナ(本種の花色が黄色のものをハナニガナと言います)が分布域的には自生する可能性がありますが、いずれももともと個体数が少なく多摩丘陵では未確認です。

細い茎を地面に這わせて四方に伸ばし、ところどころで根をおろして新苗を出します。
春〜初夏に花茎を立てて径2cmほどの黄色の花を多くつけます。
花弁(舌状花)は細くて長く十数枚から20枚ほどあります。

葉は長い葉柄の先につき、葉身は径1cm〜2cmほどの卵型〜偏円形なのが特徴です。
花に比べて葉が小さく見えることが多い。
  
葉や茎を切ると白っぽい乳液を出します。この乳液は舐めると苦味があります。
  
日本全土〜東アジアに分布します。
多摩丘陵では時々見かけますが、個体数は多くはありません。

■名前の由来
細い茎を四方に伸ばしている様子を地面を縛っているようだという意味で「地縛り」です。
標準和名は、「ニガナ」の仲間で岩礫地で見かけることが多いからです。

■文化的背景・利用
万葉集や多くの和歌集には詠われていません。文学的にも記載はないようです。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」などにその名が現れています。

■食・毒・薬
仲間(同属)のニガナとは異なり食用にはしません。
ニガナと同様に、民間で、全草を乾燥させて煎じたものを健胃などに利用するようです。

■似たものとの区別・見分け方
「ニガナ」や「イワニガナ(別名:ジシバリ)」の仲間(ニガナ属)や近縁の「アキノノゲシ属」と「フクオウソウ属」には「ニガナ」の名を持つものが10種以上もあります。
それらは頭花が相互に似ていて見分け難いところがあります。

花色(花被片の色)は、ほとんど黄色〜淡黄色です。
ただし、次の3種は紫色〜帯紫白色です。

ムラサキニガナ(と北海道以北の北地に自生するエゾムラサキニガナ)は、花色が紫色なので容易に区別できます。植物分類としてはアキノノゲシ属です。

タカサゴソウも花弁(舌状花)が紫色を帯びた白色です。花弁(舌状花)の数は多く、25枚前後あります。植物分類としてはニガナ属です。

以下では、花弁(舌状花)の色は黄色〜淡黄色〜黄白色(時に白色)です。

ニガナでは、花は径1.5cmほどで花弁(舌状花)は細長く、他とは異なり5枚〜7枚なのが特徴です。
根生葉は変異が多く、細長い楕円形から披針型で様々に裂れ込みが入ります。長さも様々で3〜10cmほどです。
草丈は20〜30cm(時に50cmほど)で、主たる茎は立てません。

シロバナニガナは、ニガナの変種です。頭花は通常白色で、花弁(舌状花)の数もニガナよりも多く8〜11枚あります。
ニガナよりも大型で草丈40〜70cmになり茎もやや太く葉も大きいので区別できます。
なお、このシロバナニガナの花色が黄色のもの(品種)をハナニガナと呼びます。

クモナニガナタカネニガナはニガナの変種です。高山帯に自生します。
頭花は通常黄色で、花弁(舌状花)の数がニガナよりも多く9〜11枚あります。

ジシバリ(標準和名:イワニガナ)では、花径2cmほどとニガナよりもやや大きく花弁(舌状花)の数が十数枚から20枚ほどと多い。葉身が長い葉柄の先につき卵型から偏円形なのが特徴です。

オオジシバリでは、花径2.5cmほどとニガナやジシバリよりもやや大きく花弁(舌状花)の数が十数枚から20枚ほどと多い。ジシバリとは異なり葉身がサジ型なのが特徴です。

ノニガナは、葉が細長く、葉先が鋭三角形状に長く伸びています。葉の基部が狭三角形状に突き出すように茎を抱くことで区別できます。

ハマニガナは海岸などに自生します。葉が深く3裂〜5裂していて裂片が円形状なので、見た目には3〜5小葉に見えるのが特徴です。

カワラニガナは、河川敷などの礫地に自生します。葉がとても細長く線形なことで区別できます。
花弁(舌状花)は20〜30m枚ほどある。

ホソバニガナは、もともと個体数が少なく稀な草本です。カワラニガナと同様に葉が線形で茎葉も披針型なのが特徴です。
しかし、花弁(舌状花)はニガナ同様に5枚(〜7枚)で、カワラニガナとは区別できます。

植物分類としてはニガナ属に近縁のアキノノゲシ属にも「ニガナ」の名を持つものがあります。
ただ、上述の通りムラサキニガナエゾムラサキニガナは、他とは異なり花色が黄色ではなく紫色です。

このアキノノゲシ属の仲間は、大型で主たる茎を立てて高さ1m前後になります。

ヤマニガナは、草丈1mほど(時に2m近く)で、初秋〜秋に円錐塔状の花序に黄色の花を多くつけます。
花はやや小さく径1cmほどです。花弁(舌状花)の数は8〜10枚あります。

アキノノゲシは、ニガナの名はありませんが、頭花の様子がジシバリなどと似ています。ただし、花色は明らかに淡い黄色の黄白色です。
草丈1mほど(時に2m近く)です。初秋〜秋に円錐塔状の花序に花を多くつけます。
花はやや大きく径2cmほどです。花弁(舌状花)の数は20枚を越えます。

フクオウソウ属にも「ニガナ」の名を持つものがあります。上記のヤマニガナアキノノゲシ同様に大型です。

オオニガナは、茎を立てて1m前後になります。枝を分けません。
秋に円錐塔状の花序を立てます。花は黄色(〜淡黄色)で径4cmほどと大きい。
個々の花は下垂して開くことが多いのですが、横向き〜やや上向きのものも多い。    
  
写真は「花」、「花と葉」、
「細くて長い葉柄」と「若い個体」
の4枚を掲載
ジシバリ
ジシバリの花
ジシバリ
ジシバリの花と葉
ジシバリ
細くて長い葉柄
ジシバリ
ジシバリの若い個体