アキノノゲシ(秋の野芥子)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

アキノノゲシ(秋の野芥子) キク科アキノノゲシ属
学名:Lactuca indica

| 総索引へ戻る |
写真一覧表の| 早春へ | 春へ | 夏へ | 初秋へ | 秋へ | 冬へ |
| トップページへ戻る |
■特徴・分布・生育環境
高さ1mを越える大型の二年生草本です。
日当たりのよい草地や荒れ地に生育します。

秋に、茎頂に径2cmほどの淡黄色(〜白)の花を数個、やや横向きにつけます。
大きな個体では茎の上部でよく枝分かれしてそれぞれの茎頂に花をつけます。
花には、花弁に見える舌状花を十数枚つけます。

葉は、しばしば「細長く長さ20cm前後で、羽状に深く切れ込む」と記載されますが、切れ込むというよりは鋸の歯のようにまばらに張り出しているといった表現のほうが当たっているような印象があります。
ただ、個体変異も大きく、すっと長いだけの場合や葉の幅が結構ある場合もあります。   
葉や茎を切ると白っぽい乳液を出します。

花が終わると、タンポポのような白色の冠毛をつけた痩果を多くつけます。
茎頂の痩果の冠毛は、全体として半球形状になります。冠毛は長さ1cmに満たない。
痩果は扁平な長楕円形で小さく、長さ3mm前後です。
  
日本全土から朝鮮半島・台湾に分布します。
多摩丘陵ではたまに見かける程度で個体数は少ないようです。

■名前の由来
春から秋まで花をつけるノゲシ(別名ハルノノゲシ)は、葉がケシの葉に似ていることからの命名のようです。
アキノノゲシは、このノゲシに対比させて秋に咲くのでアキノノゲシとなったようですが、ノゲシとは違って葉がケシの葉に似ているとは言えません。
また、花もノゲシには似ていません。

■文化的背景・利用
万葉集や多くの和歌集には詠われていません。文学的にも記載はないようです。

■食・毒・薬
蔬菜用に栽培されるレタスも仲間(同属)ですが、アキノノゲシは食用にはしないようです。
春の若い芽や葉を茹でて水にさらしてアク抜きして和え物などにできるという記載はありますが、未確認なので注意が必要です。
民間薬としても利用されないようです。

■似たものとの区別・見分け方
「ニガナ」や「イワニガナ(別名:ジシバリ)」の仲間(ニガナ属)や近縁の「アキノノゲシ属」と「フクオウソウ属」には「ニガナ」の名を持つものが10種以上もあります。
それらは頭花が相互に似ていて見分け難いところがあります。

花色(花被片の色)は、ほとんど黄色〜淡黄色です。
ただし、次の3種は紫色〜帯紫白色です。

ムラサキニガナ(と北海道以北の北地に自生するエゾムラサキニガナ)は、花色が紫色なので容易に区別できます。植物分類としてはアキノノゲシ属です。

タカサゴソウも花弁(舌状花)が紫色を帯びた白色です。花弁(舌状花)の数は多く、25枚前後あります。植物分類としてはニガナ属です。

以下では、花弁(舌状花)の色は黄色〜淡黄色〜黄白色(時に白色)です。

ニガナでは、花は径1.5cmほどで花弁(舌状花)は細長く、他とは異なり5枚〜7枚なのが特徴です。
根生葉は変異が多く、細長い楕円形から披針型で様々に裂れ込みが入ります。長さも様々で3〜10cmほどです。
草丈は20〜30cm(時に50cmほど)で、主たる茎は立てません。

シロバナニガナは、ニガナの変種です。頭花は通常白色で、花弁(舌状花)の数もニガナよりも多く8〜11枚あります。
ニガナよりも大型で草丈40〜70cmになり茎もやや太く葉も大きいので区別できます。
なお、このシロバナニガナの花色が黄色のもの(品種)をハナニガナと呼びます。

クモナニガナタカネニガナはニガナの変種です。高山帯に自生します。
頭花は通常黄色で、花弁(舌状花)の数がニガナよりも多く9〜11枚あります。

ジシバリ(標準和名:イワニガナ)では、花径2cmほどとニガナよりもやや大きく花弁(舌状花)の数が十数枚から20枚近くと多い。葉身が長い葉柄の先につき卵型から偏円形なのが特徴です。

オオジシバリでは、花径2.5cmほどとニガナやジシバリよりもやや大きく花弁(舌状花)の数が十数枚から20枚近くと多い。ジシバリとは異なり葉身がサジ型なのが特徴です。

ノニガナは、葉が細長く、葉先が鋭三角形状に長く伸びています。葉の基部が狭三角形状に突き出すように茎を抱くことで区別できます。

ハマニガナは海岸などに自生します。葉が深く3裂〜5裂していて裂片が円形状なので、見た目には3〜5小葉に見えるのが特徴です。

カワラニガナは、河川敷などの礫地に自生します。葉がとても細長く線形なことで区別できます。
花弁(舌状花)は20〜30m枚ほどある。

ホソバニガナは、もともと個体数が少なく稀な草本です。カワラニガナと同様に葉が線形で茎葉も披針型なのが特徴です。
しかし、花弁(舌状花)はニガナ同様に5枚(〜7枚)で、カワラニガナとは区別できます。

植物分類としてはニガナ属に近縁のアキノノゲシ属にも「ニガナ」の名を持つものがあります。
ただ、上述の通りムラサキニガナエゾムラサキニガナは、他とは異なり花色が黄色ではなく紫色です。

このアキノノゲシ属の仲間は、大型で主たる茎を立てて高さ1m前後になります。

ヤマニガナは、草丈1mほど(時に2m近く)で、初秋〜秋に円錐塔状の花序に黄色の花を多くつけます。
花はやや小さく径1cmほどです。花弁(舌状花)の数は8〜10枚あります。

アキノノゲシは、ニガナの名はありませんが、頭花の様子がジシバリなどと似ています。ただし、花色は明らかに淡い黄色の黄白色です。
草丈1mほど(時に2m近く)です。初秋〜秋に円錐塔状の花序に花を多くつけます。
花はやや大きく径2cmほどです。花弁(舌状花)の数は20枚を越えます。

フクオウソウ属にも「ニガナ」の名を持つものがあります。上記のヤマニガナアキノノゲシ同様に大型です。

オオニガナは、茎を立てて1m前後になります。枝を分けません。
秋に円錐塔状の花序を立てます。花は黄色(〜淡黄色)で径4cmほどと大きい。
個々の花は下垂して開くことが多いのですが、横向き〜やや上向きのものも多い。    
  
写真は「花」、「葉」と「春の新葉」の3枚を掲載
アキノノゲシ
アキノノゲシの花
アキノノゲシ
アキノノゲシの葉
アキノノゲシ
アキノノゲシの春の新葉