■特徴・分布・生育環境
草丈50cmほどで、花時には花穂を立てて高さ1mほどになる多年草です。半日陰になる林縁や疎林の林床に生育します。
秋に、長さ20〜30cmにも及ぶ細長い花穂をほぼ垂直に立て、小さな花をびっしりとつけます。ただ、花穂はしばしばやや下向きに湾曲しています。
小さな花には長さ5mm〜1cm前後の花柄があります。後述のようによく似たイヌショウマでは小さな花には花柄がありません。
葉は、2〜3出(2から3回葉軸が枝分かれする)の三出複葉(3枚の小葉に分かれている))で、小葉は長さ6cm前後の卵型ですが、しばしば3裂し、葉の縁には不揃いの欠刻状の粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。
日本各地から北東アジアに分布します。
多摩丘陵では、2013年現在では、限られた場所に少ない個体数しか確認できていません。地域絶滅が危惧されます。
■名前の由来
「晒菜(さらしな)」の名は、若葉を茹でて水に晒して食用にすることからです。
「升麻(しょうま)」は、葉が麻に似ているとしてつけられた中国での薬用名です。
■文化的背景・利用
知られた詩歌や文芸等にはその名は現れていないようです。
平安時代の「本草和名」や「倭名類聚抄」に「升麻」が現れていますが、「和名 止利乃阿之久佐(とりのあしぐさ)」とされているため、サラシナショウマとは全く別種のユキノシタ科のトリアシショウマであろうとされています。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」や貝原益軒による「大和本草」にその名が現れています。ただ、当時は単に「升麻」としていて、上述のようにトリアシショウマなど花穂が似たものを区別していなかった可能性があります。
■食・毒・薬
根茎を乾燥させたものが生薬「升麻」で、解熱や解毒などに効能があるとされています。
有毒なものがほとんどのキンポウゲ科には珍しく、上述のように若い葉は茹でて水に晒して食用にできます。
■似たものとの区別・見分け方
このような花序を持つ草本は多く、「ショウマ」の名もよくつけられるので区別するのにとても苦労します。
〇このキンポウゲ科のサラシナショウマやイヌショウマも花序は似ていますが、花茎が多くの場合枝分かれしないこと、枝分かれしても横には広がらないことで他とは区別できます。
〇サラシナショウマとイヌショウマでは、サラシナショウマの小さな花には明瞭な花柄があるのに対して、イヌショウマでは小さな花には花柄がないことで区別できます。
また、慣れないとかなり困難ではありますが、サラシナショウマでは葉の縁の鋸歯(葉の縁のギザギザ)が欠刻状でやや深く葉に裂れ込むのに対して、イヌショウマでは、鋸歯は鋭く粗いのですが、それほど深く葉に裂れ込みません。
さらに、サラシナショウマでは花茎に葉がありますが、イヌショウマでは地際の葉だけです。
〇仲間(同属)のオオバショウマは山地に自生し、名の通り葉が長さ20cm近くと大きく、花穂の花が少なくまばらに見えます。
〇山地に自生する近縁(ルイヨウショウマ属)のルイヨウショウマは、葉がサラシナショウマに似ている(類葉)のでこの名がありますが、花穂が5〜10cmほどと短いことで容易に区別できます。
オオバショウマもルイヨウショウマも多摩丘陵では未確認です。
〇ユキノシタ科のアカショウマ、チダケサシやトリアシショウマも花序の様子が似ていますが、花序の花茎の下部から上部に向かって順に枝分かれさせ枝分かれした花茎の周囲に小さな花をつけ、全体として円錐塔状の花序になることで区別できます。また、トリアシショウマでは花序が枝分かれした後さらに枝分かれすることでチダケサシと区別できます。
〇根が赤いことから「赤」の名があるアカショウマは、チダケサシの花序によく似ていますが花序の一番下で枝分かれした花茎が長いこと、また下向きに湾曲することがほとんどであること、また葉先が尾状になっていることでチダケサシとは区別できます。
〇バラ科のヤマブキショウマは、葉がヤマブキに似ているという名ですが、葉で似た花序を持つ上記の植物と区別するのは難しいものがあります。ヤマブキショウマでは枝分かれした花序の全ての長さがほとんど同じで、花序が円錐塔状ではなく、どちらかと言うと放射状に見えることで区別できます。見た印象もだいぶん違います。
アカショウマもヤマブキショウマも多摩丘陵では未確認です。
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写真は「花の全体」、 「花穂(開き始め:明瞭な花柄)」、 「花穂(開花すると花柄は見えない)」、 「蕾(明らかな花柄)」、「茎葉」と「葉」 の6枚を掲載 |
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サラシナショウマの花の全体 |
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花穂(開き始め:明瞭な花柄) |
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花穂(開花すると花柄は見えない) |
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蕾(明らかな花柄) |
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サラシナショウマの茎葉 |
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根生葉 |
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