■特徴・分布・生育環境
草丈1mくらいになる比較的大型の多年草です。
林縁〜疎林の林床など半日陰地を好みます。
葉は比較的大きく卵円形で幅も長さも10〜20cmほどです。
葉先は3浅裂しています。ただ、アカソのように深く裂れ込んではいません。
葉縁には大きくて粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。大きな鋸の歯のような見た目です。
時に茎や葉柄が少し赤味を帯びます。ただ、アカソのように明瞭な赤味ではありません。
花は初秋(〜秋)につけます。小さな白色〜汚白色の花を花穂の周りに密に多くつけます。
花穂は細長い尾状(ヒモ状)で数本をつけます。
花穂は茎の先端ではなく、茎の最上端の各葉腋から伸びています。
日本全土〜中国大陸にかけて分布します。
多摩丘陵では人里に近いところで時々見られますが、個体数は少なく、また草刈も入るのでなかなか見られません。
■名前の由来
カラムシが中心ですが、カラムシと同様に茎の繊維が丈夫なので、古い時代から繊維を取り出して布として利用されてきていることから「麻のような繊維」を意味する「苧麻(まお)」で、藪に生えるとの命名のようです。
「雌」は、よく似ている「ヤブマオ」に比べて葉質がやや薄いことからです。ただ、葉の薄さを判断するのは結構難しい。
■文化的背景・利用
古い時代には、カラムシを代表とするこの仲間(カラムシ属)の植物は衣服の重要な繊維材料として利用されてきていますが、木綿の普及以降はほとんど顧みられなくなってきています。
この仲間(カラムシ属)の植物の茎を蒸して皮をむき、表皮の内側にある繊維を取り出して利用します。
この仲間を代表する「カラムシ」は、日本書紀に、当時の天皇がこの植物の栽培を奨励したといった記述があります。
万葉集にもこの仲間を代表するカラムシが現れています。
カラムシ(の仲間)の繊維で織った布が上布(じょうふ)で、現在でも越後(越後上布・小千谷縮布)、宮古(宮古上布)や石垣(八重山上布)が知られています。
ただし、上布は本来は良質な麻織物を意味しますが、それに似た布も上布と呼ばれたようです。なお、上布は朝廷などに上納する布を意味しています。
なお、「麻」は種としての「アサ」を意味することもありますが、繊維材料を採取できる植物の総称としても使われています。
・アマ科アマ属の「亜麻」(繊維製品は通称リネン)
・シナノキ科の「黄麻」(繊維製品は通称ジュート)
・アサ科カンナビス属の「麻」または「大麻」
・イラクサ科のカラムシやアカソ(赤麻)
などです。
また、リュウゼツランなどから採取する繊維による「サイザル麻」なども知られています。
ヤブマオやこのメヤブマオなども同様に利用されたと考えられます。
■食・毒・薬
この科(イラクサ科)を代表するイラクサの仲間(イラクサ属)では、その葉と茎に刺毛があり蟻酸を含み触ると痛みと痒みが残ります。その一方で、ミヤマイラクサの葉は「アイコ」と呼ばれ、よく知られた山菜です。イラクサの葉も飢饉などの際には食用にされたようです。
しかし、ヤブマオの仲間(カラムシ属)では、毒性は確認されていないようです。
また、薬用にも食用にもされないようです。
■似たものとの区別・見分け方
この仲間(カラムシ属)は、互いに似ていて見分け難いところがあります。
〇カラムシは、葉裏が真っ白であることで容易に区別できます。
しかし、仲間(同属)のアカソ、コアカソ、クサコアカソ、ヤブマオやメヤブマオはよく似ていて区別が難しい種類です。
また、これらの種間では中間的な形質を示すことがあるので注意が必要です。
〇アカソでは葉先が三深裂していることで区別します。
また、普通は茎や葉柄が赤味を帯びるのが特徴です。
〇コアカソは矮小な木本です。
〇クサコアカソは、アカソの変種です。草姿はアカソに似ていますが葉先は3深裂せず尾状に長く伸びています。
〇ヤブマオでは、葉身は卵円形で葉先は鋭三角形状です。葉縁には鋸歯(ギザギザ)がありますが、葉が大きいのでそれほど目立ちません。
茎や葉柄が淡く赤味を帯びることがありますが、アカソ(やクサコアカソ)のように明瞭ではありません。
〇メヤブマオは、草姿や花穂はヤブマオによく似ていますが、葉が違います。
メヤブマオでは、ヤブマオとは異なり葉先は3浅裂しています。ただ、アカソのように深く裂れ込んではいません。
また、葉縁の鋸歯(ギザギザ)はヤブマオよりも大きく粗くて目立ちます。大型の鋸の歯のような見た目です。
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写真は「花(穂)と葉」、 「典型的な葉:時に葉柄に少し赤味」 と「花序」の3枚を掲載 |
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メヤブマオの花(穂)と葉 |
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典型的な葉 時に葉柄に少し赤味 |
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メヤブマオの花序 |
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