マルバコンロンソウ(丸葉崑崙草)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

マルバコンロンソウ(丸葉崑崙草) アブラナ科タネツケバナ属
学名:Cardamine leucantha

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■特徴・分布・生育環境
草丈20cmほどになる越年草です。
湿性のある場所に生育します。神奈川県でも稀な種です。ただ、丹沢山地の谷筋では見られるようです。

「コンロンソウ」とは変わった名前ですが、後述するようにその由来や意味などは判っていません。
名前からは想像できませんがアブラナ科で、比較的よく見かける「タネツケバナ」の仲間です。

茎の下部から茎を分け、春から初夏にかけて茎頂に径1cmほど花をいくつかつけ(総状花序)ます。花は四弁花(十字花)で白色です。

葉は長さ10cm前後の奇数羽状複葉(葉軸の左右に小葉を並べ先端に1枚の小葉をつける)で、頂小葉が長さ(径)2.5cmほどと他の小葉よりもかなり大きいのが特徴のひとつです。
小葉は円形〜卵型で葉縁に粗くて鈍頭の鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。
果実は長さ2cm前後ほどの細長い棒状(長角果)です。

本州から九州に分布します。
多摩丘陵では、ごく限られた地域の湿性のある林縁などにごくごく稀に見かけるだけになっています。2015年現在では確認できていません。
このような越年草(や1年草)は、ちゃんと花粉の媒介者(ポリネーター)がいて、種子が結実し、落ちた種子が発芽できる日照条件あるいは湿性条件などが整わないと、子孫を残せません。

■名前の由来
「コンロンソウ」の名前はの由来はよくわかっていません。「崑崙」とされますが当て字の可能性があります。
漢名は「白花碎米薺(はくかさいべいせい)」あるいは「白花石芥菜(ハクカセキカイサイ)」なので、ここでも「コンロン」の名の由来は判然としません。
時に、白い花を、雪をかぶっている崑崙山脈(中国大陸)に見立てたものとする説明がされていますが、この仲間だけでも白い花の種がほとんどなこともあり、やはり無理があるようです。

「丸葉(まるば)」は、草姿や花がよく似た「コンロンソウ」では小葉の形が葉先が鋭三角形状の狭長楕円形であるのに対して、円形〜卵型であることからです。

■文化的背景・利用
万葉集やその後の多くの和歌集や文芸などには、その名は現れていないようです。
江戸時代の貝原益軒による「本草綱目啓蒙」などにその名が現れているとされますが、どのような名前で現れているかは不明です。

■食・毒・薬
民間で、健胃や鎮咳などの効能があるとされますが、一般的ではないようです。
若い葉を、茹でて水に晒し和え物やおひたしにして食用にできます。また、そのままテンプラにします。

■似たものとの区別・見分け方
この仲間(タネツケバナ属)は10種以上あり、互いに似ていて見分けるのが結構難しい種類です。

コンロンソウは、名前は変わっていますがタネツケバナの仲間です。
花径が1.5cmほどとタネツケバナの2倍以上大きく、また、小葉が先端が鋭三角形状の狭長楕円形状で、タネツケバナの円形状とは大きく異なります。

〇このマルバコンロンソウは稀少種ですが多摩丘陵のある場所で自生を確認できています。花はコンロンソウに似ていますが花径1cmほどとコンロンソウよりも少し小さくタネツケバナよりも一回り大きく、奇数羽状複葉の頂小葉が長さ(径)2.5cmほどと他の小葉よりもかなり大きいのが特徴のひとつです。
小葉は円形〜卵型で葉縁が粗くて鈍頭の鋸歯(葉の縁のギザギザ)であることでコンロンソウやタネツケバナとは大きく異なります。

ヒロハコンロンソウは、花や草姿はコンロンソウによく似ていますが、小葉が卵型〜卵状楕円形で、コンロンソウの小葉よりも幅広く見えます。また、葉先はコンロンソウのように鋭三角形状ではなく普通の三角形状です。

ミツバコンロンソウは、花や草姿はコンロンソウによく似ていますが、コンロンソウのような奇数羽状複葉ではなく3枚の小葉からなる三出複葉です。

タネツケバナは、花径がマルバコンロンソウよりも一回り小さく、また奇数羽状複葉の小葉が径1cmほどの円形〜卵型であることに対して、マルバコンロンソウでは頂小葉が径2.5cm前後と大きく、またタネツケバナと異なり葉縁に粗くて鈍頭の鋸歯(葉の縁のギザギザ)があることで区別できます。

〇タネツケバナに草姿や花の大きさ・形がよく似たミチタネツケバナ(路種漬け花)は外来種で、タネツケバナとは異なりやや乾いた場所に生育し花期に根生葉(地際の葉)があり、なによりも果実が茎に沿って真っ直ぐに立っているのが特徴で、タネツケバナとのよい区別点です。

〇同様に似たタチタネツケバナ(立種漬花)も外来種で、細い茎を直立させるのが特徴で、タネツケバナよりも草丈がやや高くなり、タネツケバナとは異なり花期に根生葉(地際の葉)があります。

オオバタネツケバナ(大葉種漬け花)は、丘陵地の谷戸奥の水流のそばなどに稀に自生しています。
茎の下部の葉の頂小葉(奇数羽状複葉の先端の小葉)が他の小葉よりもずっと大きく、長さ(径)2〜2.5cmほどとタネツケバナの頂小葉(長さ(径)1cmほど)の2倍ほど大きいのが特徴です。
また、茎の中程の葉では頂小葉は長さ2cm前後の楕円形で葉先にまばらに裂れ目が入ります。この茎葉の形態が、タネツケバナやミチタネツケバナとのよい区別点です。
ただし、上記のミチタネツケバナも葉の頂小葉が大きいので注意が必要です。
果実は普通は四方に開くように斜上しているので、タネツケバナやミチタネツケバナと区別する際の目安のひとつになります。また、タネツケバナと同様に花時には根生葉はありません。

ジャニンジンでは、羽状複葉が細長くてさらに裂れ込みが入るので、ややニンジンの葉に似ています。

ミズタガラシ(水田芥子)は多年草で、茎が太いのが特徴で、茎を直立させ枝分かれせず、基部から匍匐茎を出します。なお名前が似ている単なる「タガラシ(田枯らし」はキンポウゲ科で全く別種です。    
  
写真は「花と果実」と「果実」の2枚を掲載
マルバコンロンソウ
マルバコンロンソウの花
マルバコンロンソウ
マルバコンロンソウの花と葉
マルバコンロンソウ
マルバコンロンソウの葉