| ■特徴・分布・生育環境
落葉小高木で、高さ１ｍ〜２ｍほどで花をつけます。樹高は６ｍ前後にはなります。 樹皮は灰黒色で横に皮目が入ります。 春早い時期に、花を開きます。ほどなく赤味を帯びた新葉を開き始めます。 花は径２ｃｍ前後で白色〜淡紅色です。花弁は５枚です。 花は、長さ１.５ｃｍ前後の花柄の先につき、花は普通は下向きに開花するのが特徴です。 枝に多くの花を並べてつけますが、よく目にするソメイヨシノと比べると花数は少し少なく、花自体がソメイヨシノの半分ほどの大きさなので華やかは余り感じません。 葉は、互生(互い違いにつく)し、卵状楕円型で長さ５ｃｍほど、幅３ｃｍほどです。ソメイヨシノやヤマザクラの葉に比べる半分ほどと小さい。 葉先は細長く尾状に伸びます。葉の縁に粗い鋸歯(重鋸歯：葉の縁のギザギザ)があります。 サクラの仲間は葉柄や葉身にとても小さな粒状の腺点(蜜腺)があり、その場所が種類を区別するひとつの指標になります。 マメザクラでは腺点(蜜腺)は葉身の基部につきます。ヤマザクラは多摩丘陵によく見られますが、腺点(蜜腺)は葉柄の中程につきます。ソメイヨシノでは、葉柄の最上部や葉身の基部につきます。稀に植栽されているエドヒガンでは葉身の基部につきます。同じく稀に植栽されているオオシマザクラでは葉柄の上部につきます。なお、オオシマザクラは花が白くて遠くから見てもその白さで見分けられます。 果実は径８ｍｍほどの球形で、初夏に赤から黒紫色に熟します。 もともとの自生は富士山周辺〜箱根の低山地です。三浦半島などにも自生するという説もあります。 多摩丘陵では、公園などを除けば里山で見かけることはごく稀です。ある保全地域で１個体を確認できていますが、周辺の丘陵地や低山地には確認報告が見当たらないので古い時代に植栽されたものが残存したものであろうと判断しています。 ■名前の由来 上述の通り、花や葉が小さいことから「豆」とされたというのが通説です。 「フジザクラ」は、富士山周辺の低山地に自生することからです。同じような意味で「ハコネザクラ」と呼ぶことがありますが、余り一般的ではありません。 「サクラ」の名の起源は諸説がありますが、古事記に現れる「木花之開耶姫」（このはなのさくやひめ）の「木花」がサクラを意味していて、「さくや」から「サクラ」に転訛したする説があります。 また、後述するように民俗学的な解釈として、「サ」は「田神」（さがみ）のサを意味していて穀物の霊を表し、「クラ」は田の神の依りつく「座」（クラ）を意味しているとする説もあります。 ■文化的背景・利用 江戸時代後期にサクラの園芸栽培が活発に行われ、多くの品種が作出されています。マメザクラもそれらの母種のひとつです。 なお、マメザクラは樹高が１〜２ｍほどで花をつけるので、植栽もされていたと言われています。 奈良時代から吉野山（現在の奈良県）が桜の名所として知られていますが、そのほとんどはヤマザクラであるとされています。 万葉集で４１首にも詠われているサクラはヤマザクラであろうと思われ、他に古今集、新古今集、源氏物語や平家物語などにその名が現れています。 江戸時代の芭蕉などの句集や、「本草綱目啓蒙」などにもその名が現れています。 なお、現在では桜と言えばほとんどソメイヨシノを指していますが、ソメイヨシノは江戸時代にエドヒガンとオオシマザクラの人工交配種として作出され「（当時桜の名所であった）奈良の吉野山に行かなくても吉野の桜が見られるとして売り出された」とされています。 １９１２年に、東京市から３０００本のソメイヨシノを中心とした桜の苗木が米国に送られポトマック川河畔に植えられたことは有名です。現在でも桜の名所として親しまれています。その返礼としてハナミズキが日本に贈られました。 なお、お花見は、現代では満開の桜の木の下での酒宴としての行事として定着していますが、その起源には諸説があります。 代表的なものに、奈良時代の頃に行われていた貴族の行事がお花見の起源であるとの説があります。 また一説には、田植えの頃にちょうどサクラが開花することから、田植えの前に豊作を祈願した神事がお花見の起源であるとの説もあります。 「サ」は「田神」（さがみ）のサを意味していて穀物の霊を表し、「クラ」は田の神の依りつく「座」（クラ）を意味しているとの民俗学的な解釈です。 ただ、当初の花見は桜ではなく梅を愛でていたようです。８世紀中頃に、大宰府で大伴旅人が梅の宴を開いたとの記録があります。事実、万葉集では、梅を詠んだ歌は１１８種にもおよびますが、桜を詠んだ歌は４１種にとどまっています。 梅が中国から日本に渡来したのは奈良時代の前の飛鳥時代であろうと推定されていて、梅の花の美しさや香りのよさに、当時の貴族や文化人が魅了されたことが伺えます。 ただし、弥生時代の遺跡から梅の種子が発見されているので、もっと古い時代に薬木として渡来していたとも言われています。中国では古くから薬用として栽培されていて、漢方薬として「烏梅（うばい）」などがあります。 したがって、「古事記」や「日本書紀」には梅は現れていません。逆にサクラが現れているとの解釈もあります。神代の巻にある「木花之開耶姫」（このはなのさくやひめ）の「木花」はサクラを意味しているといわれています。 いずれにしても、平安時代以降には、花見と言えば「桜」であったようです。奈良の吉野山のヤマザクラなどを鑑賞したのでしょうか。 現代では、サクラと言えばソメイヨシノですが、ソメイヨシノが現れたのは江戸時代なので、それまでは、主としてヤマザクラなどを鑑賞していたことになります。 マメザクラの材や樹皮は利用されないようです。 ■食・毒・薬 マメザクラを薬用に利用することはないようです。 オオシマザクラの葉は塩漬けにして桜餅を包むのに使用しますが、マメザクラの葉は食用にはしません。 なお、果実は甘みがあります。 ■似たものとの区別・見分け方 多摩丘陵に自生するヤマザクラや、稀に植栽されているエドヒガンやオオシマザクラとの区別は上述の通りです。 サクラの仲間では他に多摩丘陵にはウワミズザクラやイヌザクラが自生しますが、花穂が瓶を洗うブラシ状なので容易に区別できます。なお、両種とも腺点（蜜腺）は葉柄でなく葉身の基部につきます。 |
| 写真は「花」、「花(下向きに開花する)」、 「花と新葉」、「葉」と「幹」 の５枚を掲載 |
 |
| マメザクラの花 |
 |
| 花(下向きに開花する) |
 |
| マメザクラの花と新葉 |
 |
| マメザクラの葉 |
 |
| マメザクラの幹 |