| ■特徴・分布・生育環境
常緑の小低木でほぼ直立し、ほとんど枝分かれせず高さ２０ｃｍ〜７０ｃｍほどになります。 日の余り当たらない林床に自生します。 花は、夏に、径７ｍｍ前後の白い小さな花を葉腋に数個房状につけます。 花冠は５深裂して裂片は反り返ります。 果実は、晩秋から早春に鮮赤色に熟し茎の中程に房状に多くつけ、径６ｍｍほどの球形でよく目立ちます。 葉は、茎の中程から上部につき、とても細長く幅１.５〜４ｃｍ前後で長さは時に２０ｃｍ前後になります。葉先は鋭三角形状です。 本州の茨城県・新潟県以西から中国大陸・台湾に分布します。 多摩丘陵では、個体数は少なく、日の当らない林床にごく稀に見られます。 ■名前の由来 タチバナに似ているという意味で「タチバナ（橘）」とされたようです。 しかし、タチバナはミカン科ですが、カラタチバナはミカン科ではありません。 また、「橘」は日本に自生する柑橘類なのに、わざわざ「唐（から」と冠されている理由はよくわかっていません。 なお、古い時代には「タチバナ」や「コウジ」は柑橘類の総称で、区別するために「カラタチバナ」となったという説もあります。 ■文化的背景・利用 仲間（同属）のヤブコウジは万葉集に数首で詠われていて、 「あしひきの 山橘の 色に出（い）でて わが恋ひなむを ひとめかたみすな」 などがあります。 また、源氏物語にも「ヤマタチバナ」の名で現れています。さらに、古今集にも２首ほどで詠われています。 ただ、当時は、仲間（同属）であるヤブコウジ、カラタチバナやマンリョウは明確に区別されておらず、この「ヤマタチバナ」はカラタチバナやマンリョウも意味しているという説もあります。 また、江戸時代の小野蘭山による「本草綱目啓蒙」に「ヤブカウジ」、「ヤブタチバナ」や「ヤマタチバナ」の名が現れています。 また、ヤブコウジと同様にカラタチバナも江戸時代には多くの観賞用品種が作出されています。 冬に赤い果実をつけるセンリョウ（千両）やマンリョウ（万両）に対比させて「ヒャクリョウ（百両）」の別名があります。 お正月に、「千両、万両、有り通し」として金運に恵まれるという縁起物として、しばしば赤い果実をつける矮小低木が飾りつけられます。 千両は、センリョウ科センリョウ属のセンリョウで、万両はヤブコウジ科ヤブコウジ属のマンリョウ、有り通しは、アカネ科アリドオシ属のアリドオシ（蟻通し）のことです。 アリドオシには一両の別名があります。また、ヤブコウジ（ヤブコウジ科）を十両、カラタチバナ（ヤブコウジ科ヤブコウジ属）を百両として、ともに縁起物とされます。 なお、「難を転じる」という意味合いからナンテン（メギ科）も同じように使用されます。 ■食・毒・薬 熟した果実は生食できます。また、果実酒にします。一部に根に去淡の効能があるという報告がありますが、一般的ではないようです。 ■似たものとの区別・見分け方 多摩丘陵には似たものはありません。 果実が赤いことを除けば、センリョウ、マンリョウ、ヤブコウジやアリドオシとは姿形がまるで違います。 |
| 写真は「果実と葉」(1)と「果実と葉」(2)の２枚を掲載 |
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| カラタチバナの果実と葉（１） |
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| カラタチバナの果実と葉（２） |