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「伏せ焼き」は、炭焼きの方法の中では、里山などでも実施できる比較的簡便な方法です。 炭焼きは、暑さもありますが、木であれ竹であれ炭材が水を上げていない晩秋から冬季に実施するのが普通です。また、晩秋から冬季の方が落葉などの材料を集めやすいこともあります。 なお、炭焼きは春から夏でも実施可能ですが、空中湿度が相対的に高いのでよい炭を焼くには熟練した技術が必須です。昔から、農閑期であり、空気が乾燥している晩秋から冬に行うのが普通です。 (1)材料の準備 ・炭材は、日陰などで乾燥させておきます。木の場合は、炭焼きの1ヶ月前後前の秋深くに伐採して葉をつけたまま日陰においておく方が乾燥し易いので、大きく切っておいてその後炭材の長さに玉切(長さ60cmくらい)します。なお、竹の場合肉部が相対的に薄いので、竹炭焼きの4〜5ヶ月前(すなわち夏季)に伐採して切りそろえ、竹割して節をナタなどでとっておいて日陰で乾燥させれば大丈夫です。 ・トタン板 1枚。土や雨水が窯内に入るのを防ぐために使います。 ・耐火レンガあるいはブロック。焚き口に使用します。どうしても入手できない場合は、粘土を使って焚き口を作ることもできます。 ・煙突。右図のようにヒジのように曲っているものが必要です。排煙のための煙道を作るのに使います。ホームセンターなどでステンレス製の煙突を入手できます。 どうしても入手できない場合は、節を抜いた竹筒の基部を斜めに切って、図のようにアルミテープなどで「L 」字型つないで使用することもできます。 ・焚き口で燃やす「ワラ」や「ヒノキ(火つきがよい)などの小枝」、細い枯れ枝や乾燥させた薪(まき)をかなり多く集めておきます。また、炭材の上にかぶせておく枯れ葉なども多く必要です。 ・木酢液や竹酢液を採取する場合には、さらにそのための器材が必要です。木酢液と竹酢液のページをご参照ください。 (2)窯の基礎作り ・窯の場所を決めます。土に湿気が強い場所では、窯内の温度が上がらないので、よい炭は焼けません。 ・深さ約20cm〜30cm、縦方向に1間(約180cm)、横方向に半間(約90cm)程度の浅い穴を掘ります。畳一枚程度の大きさです。掘った土は後で窯を覆うのに使うので脇に盛っておきます。 ・なお、入手したトタン板よりも、両脇の幅がそれぞれ15cm〜20cm程度広くなるような大きさになるように窯の穴の大きさを決めます。 ・また、この大きさよりもあまり小さいと、やはり窯内の温度が充分に上がらないので、うまく炭になりません。 ・風向きを確認して、風の方向に沿って縦方向がくるようにします。向きを間違えると窯内に焚き口から熱がうまく伝わりません。 ・一般的には、風上の方向(焚き口の側)をやや掘り下げて、少し登り勾配となるようにします。このようにした方が火が回り易くなります。ただし、逆に下り勾配することもあり、その方が燃えにくく炭が均等に焼けるとも言われますが、結構難しい面もあります。 ・風上側を「焚き口」、風下側を「煙道口」(煙突を設置)にします。 (3)窯作り @煙突の設置 ・右図のように、窯の風下側の端に煙突を設置します。煙突は窯の底面に接するように置き、煙突の横向きの口が風上側を向くようにします。倒れないように石やブロックなどで固定しておきます。 ・木酢液や竹酢液を採取する場合には、そのための器材も設置します。その方法については木酢液と竹酢液のページをご参照ください。 A焚き口の設置 ・右図のように、窯の風上側に「焚き口」を作ります。 ・耐火レンガ(やブロック)などを積んで、高さ20cmくらい、開口部分が30cmくらい、奥行きが30cmくらいになるようにします。 B炭材のセット ・炭材は、長さ60cmくらいで直径5cm程度が適当です。これよりも太いものはナタなどで割ります。 ・窯の長辺の両端に、先ず「敷き木」を置きます。これは空気の通りをよくするとともに、炭材がじかに地面に触れて、湿ってしまわないようにするためです。 ・炭材を煙突側から、右図のように、敷き木の上に隙間なく横に並べて置き、さらにその上に重ねていきます。 ・炭材は、発火しやすいように、下のほうには細い炭材、真ん中に太い炭材、上部には、やはり火つきのよい細い炭材を重ねます。 ・炭材は、高さ20cmから30cm程度の高さまで積み、窯の穴の縁からやや高くなるように積み重ねます。 ・炭材の両側は、溝のように空けたままにしておくことが秘訣です。 ・竹を炭材とする場合には、節を抜いておきます。そうしないと破裂します。また、太い場合には、ナタなどで2分割または4分割します。 通常、稈(幹)の肉部が厚いモウソウチクを使います。マダケやハチクでは稈(幹)の肉部が薄く、窯の火などの管理に熟練していないと灰になってしまいます。 ・このように炭材を横に伏せて焼くので「伏せ焼き」と呼ばれます。 C窯の覆いのセット ・積み上げた炭材の上に、枯れ草(ススキなどでもよい)、細い枯れ枝、枯れ葉やワラなどを15cmくらい積み重ねます。 ・炭材の両側(の溝になった部分)と煙突の周りにも、隙間なく枯れ草、細い枯れ枝、枯れ葉やワラなどを詰めます。このとき、余り強く押し込まないようにします。 ・その上にトタン板を乗せます。窯の大きさよりも小さいトタン板を使うのは、炭材が炭化するとき収縮して窯の天井が沈み込む際に、トタン板が窯の縁にひっかかって、天井と炭材の間に隙間ができるのを防ぐためです。隙間ができると、燃え過ぎてしまって炭がうまく焼けません。 ・その上から土をかぶせます。厚さ20cmくらいに窯全体を覆うようにします。焚き口も煙突の周囲も覆います。 ・トタン板は、土が炭材の間に入り込んだり、不意の雨水などが窯の内側に入り込まないようにするためです。 (4)口焚きの開始 ・焚き口に、火付きのよいヒノキの小枝や枯れ草で火をつけて、次に小枝を燃やし、徐々に太い木を燃やしていって、火に勢いをつけます。 ・このとき炭材の下側ではなく、手前の焚き口のところで燃やします。炭材の下側で燃やすと炭材が燃えて灰になってしまします。 ・火に勢いがついたら、ウチワ等であおいで窯の中に炎でなく“熱”を追い込みます。炭材に火をつけるのではなく、むし焼きにするために火ではなく熱を送り込みます。 ・煙突から白い煙が勢いよく出始めるまで(2時間くらい)、火を絶やさないように薪を追加して燃やします。 ・白い煙が勢いよく出始めたら、炭材全体に熱が回り、自然発火が始まっています。 ・煙突以外の窯の部分から煙が出たら、そこをすぐに土でふさぎます。 (5)炭焼き ・煙突から白い煙(水蒸気が多い)が勢いよく出てから、いがらっぽい臭いの煙が出始めたら、窯内で自然発火が始まっています。 ・自然発火とは、炭材の繊維質等が熱で分解されて分解熱が発生し、この分解熱によりさらに熱分解が進み燃料を加えなくても炭化が進む状態を言います。 ・この状態(自然発火)になったら、焚き口の火を消し、焚き口を狭めます。高さ5cm、幅10cmほどの通風口を残して、周りを粘土などで密閉します。 ・木酢液や竹酢液を採取するタイミングについては、木酢液と竹酢液のページをご参照ください。 ・煙の色が青みがかってきて、青色から透明になった時点で焚き口を完全にふさぎ、煙突も引き抜いて煙突口もふさぎます。 ・焚き口や煙突口に隙間が残っていたり、窯を覆っている土にひび割れなどがあると、空気が入って、炭が燃えて灰になってしまうので、これらを全て土でふさぎます。 ・炭材の種類や太さなどによって異なりますが、伏せ焼きの場合は、木材では概ね6時間から8時間くらいで炭化が終了します。竹材では概ね4〜6時間程度です。 (6)炭の取り出し ・窯を密閉してから半日から一昼夜ほど待ってから、土をどけてトタン板を脇にひっくりかえすようにして取り除きます。 ・炭を取り出します。 このように「伏せ焼き」であっても、穴掘りから始めて(事前に掘っておくこともできますが夜露などで湿ってしまうことが多いので通常は当日掘ります)、炭材のセット、窯の覆いなどの準備をして炭焼を終えて窯を密封するのは、早朝から始めても通常夜半になります。 したがって、数名でテントや寝袋を持ち込み、バーベキューなどを楽しみながらその場で泊り込むことになるのが普通です。 伏せ焼きは比較的容易ですが、炭材の準備はもとより、窯を覆うための枯れ草(ススキなどでもよい)、細い枯れ枝、枯れ葉やワラなどを大量に集めておくことなど、それなりの手間がかかります。 |