■特徴・分布・生育環境
後述のように「秋の七草」のひとつです。
大人の背丈ほどになる落葉低木で、草本のような性質も備えているので半低木ともされます。
花は、初秋から秋に葉腋に多くつけ、長さ1.5cmほどになる紅紫色の蝶型花です。
花柄が長く、葉の間から花穂が突き出しているのが特徴です。
葉はマメ科に普通の三出複葉(小葉3枚からなる葉)で、小葉は円形に近い楕円形で、長さ3cm前後です。
本州以西から北東アジアに分布します。
多摩丘陵では、2010年現在では、この30年ほどの間に個体数を大きく減らしていて、なかなか出会えません。
■名前の由来
ハギの名は、草本のように見えるのに古い株から芽を出すので「生え芽(き)」から転訛したという説がありますが、一般的ではありません。
「ヤマ」は、山地に多いことからです。ただ、山地だけではなく平地の里山にも自生します。
なお、「萩」は国字のようで、中国語の「萩」は全く別種です。
■文化的背景・利用
「秋の七草」は、万葉集の山上憶良の歌
「秋の野に 咲きたる花を 指(おゆび)折り かき数ふれば 七種の花」
「萩が花 尾花(すすき) 葛花(くず) なでしこの花 おみなえし また藤袴(ふじばかま) 朝貌(あさがお:ききょう)の花」
がその起源となっています。
この「はぎ」は、このヤマハギ、あるいは後述する仲間(同属)のマルバハギであるとされています。
単に「ハギ」という名の植物はありません。
「萩」は、古い時代から多くの詩歌や文芸に数多く現れていて、古くから日本人に親しまれていたようです。
万葉集には何と141首にも及ぶ歌に「萩」が詠まれています。万葉集ではもっとも多く詠われた植物です。
古今和歌集、新古今和歌集や後拾遺和歌集などにも何首か詠われています。
西行法師による「山家集」にも多くの歌で詠われています。
紫式部の「源氏物語」や清少納言による「枕草子」にも萩が現れています。
「平家物語」、「徒然草」や「太平記」などにも「萩」が現れています。
平安時代の本草書である「倭名類聚抄」にも「萩」の名が現れています。
江戸時代には「しら露もこぼさぬ萩のうねりかな」松尾芭蕉の句があります。
小林一茶や与謝野蕪村の句にも詠われています。
江戸時代の貝原益軒による「大和本草」にも現れています。
■食・毒・薬
ハギの仲間には、有毒であるという報告も薬用にするという報告もないようです。
ただ、民間でヤマハギやミヤギノハギの根を刻んで天日乾燥したものが婦人病に効能があるとされます。
食用にはしないようです。
■似たものとの区別・見分け方
仲間(同属)のマルバハギでは花柄が短く、花が葉の間に咲いているように見えることで区別できます。
同じく仲間(同属)のミヤギノハギでは枝が枝垂れているので容易に区別できます。
この仲間(同属)では、多摩丘陵には他にネコハギ、メドハギやヤハズソウが自生していますが、全て草本で草丈も低く、花もかなり小さいので容易に区別できます。
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写真は「花穂と葉」と「全体」の2枚を掲載 |
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ヤマハギの花穂と葉 |
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ヤマハギの全体 |
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