ツルハナナス(蔓花茄子)、ヤマホロシ(山保呂之)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

   
ツルハナナス(蔓花茄子) ナス科ナス属
通称:ヤマホロシ(山保呂之)学名:Solanum jasminoides

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■特徴・分布・生育環境
明治時代に観賞用に渡来したとされる外来種で、特に野生化しているわけではありませんが、日本に自生するヤマホロシとの混乱が見られるので敢えて記載しました。

この植物は、上述の通り日本での名前に混乱が生じています。「ツルハナナス」は南米ブラジル原産とされ、観賞用に持ち込まれた外来種です。
当初は「ツルハナナス」(蔓花茄子)の名が使われていましたが、1990年代後半頃(推定です)から園芸店ではよく似た在来種の「ヤマホロシ」の名で販売され始めています。恐らくマーケティングの観点からは「ハナナス(花茄子)」の名では「野菜の茄子」と混同される恐れがあることを避けたかったのではないか、と推定されます。そこで、よく似ている「ヤマホロシ」の名前を使ったものと思われます。
その結果、インターネット上などでは「ヤマホロシ」の名のほうが優勢になっています。
ところが、日本にもともと自生するよく似た「ヤマホロシ」(山保呂之)の名を持つ植物があるために、混乱を招く結果になっています。
その上に、学名の属名「Solanum」の英語読みの「ソラナム」も使われるので余計に混乱しています。「ソラナム」では、ナス科ナス属の植物は全て含まれてしまいます。

「ヤマホロシ」とも呼ばれている「ツルハナナス」は:
・学名:Solanum jasminoides:ソラヌム・ジャスミノイデス)
木本です。常緑のつる性植物
・葉に裂れ込みは入りません。葉の表面にやや艶があります。葉の形は、葉先が三角形状の楕円形です。
・花は、花被片が平開します。ただし、花の終わりごろには花被片はやや後方に反り返ります。花色は淡紫色〜白色です。
・果実はほとんどの場合できません。確認してはいませんが、稀にできる果実は黒熟するようです。

日本在来の「ヤマホロシ」は:
・学名:Solanum japonense:ソラヌム・ジャポネンセ):
草本です。多年草で、つる状になります。
・下部の葉には3〜5裂する裂れ込みが入ります。葉の表面に艶はありません。葉の形は、葉先が鋭三角形状の三角状広卵形〜三角状披針形です。
・花は、開花すると同時に花被片が後方に反り返ります。花色は通常淡紫色です。ただ、時に白色に近いものもあります。
・果実は径7mmほどの球形で、秋に赤く熟します。

とかなり違います。ただ、花の形や花容は似ています。花色も白色〜淡紫色でこれも似ています。

長さ2〜3mほどになるつる性の常緑低木です。恐らく全草有毒であろうと思われますが、確認できてはいません。

初夏から花をつけ、時に初秋まで房状に多くの花をつけます。花被片は白色〜淡紫色で径2cmほどです。   
葉は長さ5cm前後で、葉の表面にやや艶があり、葉先が三角形状の楕円形です。

多摩丘陵では野生化した個体は見られません。近年では人家の周囲にしばしば植栽され、フェンスなどにからみついています。

■名前の由来
つる性なので「ツル」、ナスの仲間で花が綺麗なので「ハナナス」です。
通称の「ヤマホロシ」は、上述のように園芸店でこの名で販売され、ガーデニングの普及とともに一般化したものです。日本在来種の「ヤマホロシ」とは上述の通り別種です。

■文化的背景・利用
知られた詩歌や文芸などには現れていないようです。
江戸時代までは、仲間のヒヨドリジョウゴが「ホロシ(保呂之)」と呼ばれていたようです。ただ、この「ホロシ」の名の由来はよくわかっていません。
この仲間(ナス属)は有毒なものが多いのですが、ジャガイモやナスなど野菜として栽培されるものも多くあります。

■食・毒・薬
この仲間には全草に神経毒成分が含まれていることが多いので注意が必要です。恐らくこのツルハナナス(通称ヤマホロシ)も有毒であろうと推定されます。

■似たものとの区別・見分け方
この仲間(同属)のヤマホロシとの区別は上述の通りです。日本在来のヤマホロシは多摩丘陵では確認できていません。
また、似たヒヨドリジョウゴも仲間ですが、葉に裂れ込みが入ることが多く、全草に毛が密生すること、花被片が後方に強く反り返ることで区別できます。    
  
写真は「花」と「葉」の2枚を掲載
ツルハナナス(通称ヤマホロシ)
ツルハナナス(通称ヤマホロシ)