タチイヌノフグリ (立ち犬陰嚢)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

タチイヌノフグリ (立ち犬陰嚢) ゴマノハグサ科クワガタソウ属
学名:Veronica arvensis

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■特徴・分布・生育環境
明治時代に欧州から渡来した外来種です。
路傍や畑地などやや乾燥した場所に生育する1〜2年草です。
時に下部で枝分かれしますが茎はほぼ直立し10cm〜20cmほどで、花も葉もとても小さく小型です。

春に、茎の上部の葉腋に径3mmほどのとても小さな4弁花をつけます。
花色には変異があり、白に近いものから淡紅紫色、多くは淡青色〜青色です。
花柄はなく、葉腋に密着しているため、花が小さいこともあって目立たず、歩いていると見落とします。
オオイヌノフグリの仲間であると知っていると、かなり小さいので余計に見落としがちです。花はほとんどの場合触るとすぐに落ちます。
なお、オオイヌノフグリも他の草本の草丈が高くなる晩春には、茎を立てて茎頂に花をつけるので注意が必要です。オオイヌノフグリは花径が1cmほどとはるかに大きく、明瞭な花柄があります。

葉は、茎に密についているように見えます。葉は三角形状で長さ6〜15mmで茎頂に向けて上部の葉は徐々に小さくなります。葉の縁にはやや粗い鋸歯があります。下部の葉は円形状です。

多摩丘陵では、路傍の草地や畑地や緑地などにごく普通に見かけます。

■名前の由来
在来種のイヌノフグリに似ていて、茎がほぼ直立するので「立ち」です。
「犬陰嚢(いぬのふぐり)」の名は、果実の様子が雄犬の「○○たま」に似ているという命名ですが、ちょっと品の無い名前です。学名(属名)のヴェロニカで呼んであげたい可憐な花です。
なお、属名のクワガタソウの「クワガタ」は「鍬型」で、戦国の武将が被った兜(かぶと)の前面につけた2個の角のような飾りのことで、2個の雄蕊の様子が似ているから「クワガタ」であるという説と、果実のガクの様子が似ているから「クワガタ」であるという説があります。虫メガネで観察すると何となく納得します。

■文化的背景・利用
渡来して歴史が浅いこともあって、知られた詩歌や文芸などには現れていないようです。

■食・毒・薬
有毒であるという報告も薬用にするという報告もありません。
食用にするという報告もありません。

■似たものとの区別・見分け方
在来種で仲間(同属)のイヌノフグリでは花径が3mmほどととても小さく、花色は白に近く紫条が入ります。イヌノフグリは個体数が少なく多摩丘陵でも未確認です。
同じく仲間(同属)のオオイヌノフグリもタチイヌノフグリと同様に明治時代に欧州から渡来した外来種です。茎はほとんどの場合伏しています。花はタチイヌノフグリの径3mmほどよりもはるかに大きく径1cmほどです。花色は通常青色です。また、オオイヌノフグリでは明瞭な花柄があります。
また、同じく仲間(同属)のフラサバソウもオオイヌノフグリと同様に明治時代に欧州から渡来した外来種で、茎は伏していて草姿がオオイヌノフグリに似ていますが、花径が径4mmほどと小さく、全体に毛が多いことが特徴です。
   
  
写真は「花と花茎」、「花(白花)と茎葉」、
「花と茎葉」と「茎葉」の4枚を掲載
タチイヌノフグリ
花と花茎
タチイヌノフグリ
花(白花)と花茎
タチイヌノフグリ
花と茎葉
タチイヌノフグリ
茎葉