タチフウロ(立ち風露)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

タチフウロ(立ち風露) フウロソウ科フウロソウ属
学名:Geranium krameri

| 総索引へ戻る |
写真一覧表の| 早春へ | 春へ | 夏へ | 初秋へ | 秋へ | 冬へ |
| トップページへ戻る |
■特徴・分布・生育環境
草丈30〜70cmほどになる多年草です。

茎は分枝して立ちあがります。   
葉は掌状で5〜7裂し、裂片の葉はさらに裂れ込みが入ります。

花は晩夏から初秋に咲き、分岐した茎頂に1〜3個つけます。ただし、ほとんどの場合一度に開花するのは一輪だけです。
径3cm程度の5弁花で、花色には変異が多く、白〜赤紫色の花をつけます。花弁には中程まで濃い紫条が入ります。

東北地方以南から中部地方・四国・九州、北東アジアに分布します。
多摩丘陵では、2010年現在ごくごく限られた場所にごく少ない個体数しか確認できておらず、地域絶滅が危惧されます。

■名前の由来
この仲間(同属)では、茎が立ちあがるものは多いのですが、タチフウロは平地の里山に生育するので代表して「立ち」となったようです。
学名(属名)の「ゼラニウム:Geranium」の名で園芸店などで販売されているゼラニウムは「テンジクアオイ属:Pelargonium」で別種です。

属名「フウロソウ属」の「風露」とはなかなか風情のある名前ですが、その由来はよく判ってはいないようです。
植物学者の牧野富太郎博士による「いわゆる風露草はイブキフウロ(伊吹風露)のことで、名の由来は不明であるが、江戸時代に浅草の植木屋が風露草として売っていたとある」が知られています。

■文化的背景・利用
知られた詩歌や文芸等にはその名はあらわれていません。
本草書などにもその名は現れていないようです。

■食・毒・薬
仲間(同属)のゲンノショウコは、花期に地上部を天日乾燥させたものを煎じて、下痢、食あたりや胃腸病などに用いると顕著な効能があるとされています。タチフウロも同様に利用されるという報告がありますが、未確認です。
食用にはしません。

■似たものとの区別・見分け方
仲間(同属)のゲンノショウコは、草丈も低く小型で花も径1.5cmほどとかなり小さいので容易に区別できます。
この仲間は、標高の高い場所に生育するものがほとんどか、自生地が限定されているものがほとんどです。
低山にも分布するとされるグンナイフウロが自生していた可能性がありますが、かなり昔から未確認です。グンナイフウロでは、花茎の先に十数個の花をつけるのが普通なので、容易に区別できます。    
  
写真は「花1」と「花2」の2枚を掲載
タチフウロ
タチフウロの花1
タチフウロ
タチフウロの花2