多摩の緑爺の植物文化誌 |
9月:5.「エゴノキ」 −現在は禁止漁法、石鹸 |
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「エゴノキ」は、里山や低山に普通に見られる落葉小高木で、春に径2cmほどの白い花を枝一面につけ、初秋に長さ1cmほどの紡錘型の果実を枝一杯に下垂させます。
「エゴノキ」の名は、果皮に麻酔毒、エゴサポニンを含み食べると「えぐい」ので、「えぐい木」から転訛したというのが通説です。
昔は、サポニンを含む根や果実を池などで叩いて潰して魚を麻痺させてとる漁法がありました。ただ、現在は、全ての水中生物を一網打尽にしてしまうために禁止されています。
なお、野鳥をとるカスミ網も同様な理由で禁止されています。
ただ、この果皮は泡立つので、昔は石鹸代わりにも使われました。
果皮は有毒ですが、種子には脂肪分が多く、野鳥のヤマガラなどは上手に果皮を剥いて種子だけを食べます。
材はやや重くて硬いので、建築材や器具材などに使われます。また、材は粘りがあって強いので「輪かんじき」などに利用されたようです。
万葉集に、三首で詠われています。そのうちの1首は長歌です。
「息の緒に 思へる我れを 山ぢさの 花にか君が うつろひぬらむ」
「山ぢさの 白露重み うらぶれて 心も深く 我が恋やまず」
として現れる「山ぢさ」は、エゴノキであるとされています。
古い時代から人に近い存在だったことをうかがわせます。
なお、花つきがよく、花が下垂していて見上げてもよく見えるので、近年では庭木としても植栽されます。花が淡紅色の品種もあります。
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