多摩の緑爺の植物文化誌
9月:2.「オミナエシ」と「オトコエシ」 −女飯、男飯?

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オミナエシ
「オミナエシ」は、「秋の七草」のひとつです。
一般に、漢字名に「女郎花」をあてますが、平安時代の「倭名類聚抄」に「女郎花」の名が現れています。
この植物には、腐敗した醤(ひしお)のような悪臭があることから漢名は「敗醤(はいしょう)」です。

「秋の七草」は、万葉集の山上憶良の歌、
「秋の野に 咲きたる花を 指(おゆび)折り かき数ふれば 七種の花」
「萩が花 尾花(すすき) 葛花(くず) なでしこの花 おみなえし また藤袴(ふじばかま) 朝貌(あさがお:ききょう)の花」
がその起源となっています。
なお、「朝貌(あさがお)」は諸説ありますが、現在では「キキョウ」とするのが定説になっています。

オミナエシは、黄色の小さな花を群がらせるように多くつけて美しいことから、万葉の時代から江戸時代まで、人々に愛(め)でられていたようです。
しばしば、草姿が似ていて、白い小さな花を群がらせる「オトコエシ」に対比されます。「オミナ(女性を意味する)エシ」に比して茎が太くて強壮な印象があることから「男(おとこ)えし」と名付けられたというのが一般的です。

万葉集に14首ほどで詠われていますが、

「をみなへし あきはぎ(秋萩)凌(しの)ぎ さを鹿の 露分(わ)け鳴かむ たかまと(高円)の野そ」 大友家持

などがあります。
また、古今和歌集には「女郎花(おみなえし)」として、

「女郎花 秋のの風に うちなびき 心ひとつを たれによすらん」
「つまこふる 鹿ぞなくなる 女郎花 をのがすむのの 花としらずや」

など、多くの和歌に詠われています。「新古今集」にも詠われています。
さらに、西行法師の「山家集」にも、

「たぐひなき はなのすがたを 女郎花 いけのかがみに うつしてぞみる」
「女郎花 いけのさなみに えだひぢて ものおもふそでの 濡(ぬ)るゝが顔(ほ)なる」

など、十数首に詠われています。
江戸時代の芭蕉や蕪村の句にも詠われています。

オミナエシは、オミナ(美しい女性)メシ(飯)から転訛したという説があります。すなわち、黄色の小さな花を粟(あわ)粒に見立てて、昔は粟(あわ)飯は女性の食べ物であったからという説です。
俗説であろうと思われますが、「オミナエシ」と「オトコエシ」の名は、女性は粟を混ぜた黄色の「女飯(おんなめし)」を、男性は白い米の「男飯(おとこめし)」を食べさせる封建時代の名残から付けられた名前であるというものがあります。


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