多摩の緑爺の植物文化誌
8月:7.「やまとなでしこ」 −カワラナデシコ?

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カワラナデシコ(ナデシコ)
日本女性の優美さを称える「大和撫子(やまとなでしこ)」の言葉は、古今和歌集の、

「我のみや あはれと思はん 蛬(きりぎりす) なくゆふかげの やまとなでしこ」

が最初であると言われています。
ただ、この歌の「やまとなでしこ」は、当時中国からもたらされた「カラナデシコ(唐撫子)」に対比させて、大和(やまと)の国に自生するナデシコを意味していたようです。
その後、「ナデシコ」の繊細で優美な花の様子や草姿を、日本女性にたとえるようになって「やまとなでしこ」と称されるようになったようです。

「ナデシコ」は、ナデシコ科ナデシコ属の多年草で「カワラナデシコ」とも呼ばれます。
環境省指定の絶滅危惧種です。

「秋の七草」のひとつです。
万葉集の山上憶良の歌、

「秋の野に 咲きたる花を 指折り(おゆびおり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
「萩の花 尾花葛花 撫子(なでしこ)の花 女郎花(おみなえし) また藤袴 朝貌(あさがお)の花」

が、秋の七草の起源とされています。同じ万葉集に何首か詠われていて、

「野辺見れば なでしこの花咲きにけり わが待つ秋は 近づくらしも」

等があります。
清少納言の「枕草子」にも「うつくしきものは なでしこの花」と称えられています。
その他にも源氏物語や徒然草など多くの文芸にも現れています。
江戸時代にも、

「霜の後 撫子さける 火桶哉」

など、多くの文芸に現れています。

なお、開花期の全草を乾燥させたものを生薬「瞿麦(くばく)」と呼び、煎(せん)じて利尿や月経不順など用いるようです。また、種子を乾燥させたものを生薬「瞿麦子(くばくし)」と呼び同様に用います。


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