多摩の緑爺の植物文化誌
8月:5.「お盆」−オガラ、マコモ、ミソハギ他

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ミソハギ
8月に入ると「お盆」の時期が訪れます。8月15日前後の数日間で、一般に「旧盆」とも呼ばれます。
ただ、7月15日ころを中心とした「7月盆」として行われる地域もあります。また、「旧暦」の7月15日を中心に行われる場合も「旧盆」とよばれることがありますが、現代の暦では年によってかなり異なるので近年では少ないようです。

「お盆」は、仏教行事とされることが多いようですが、「毎年お盆にご先祖様が戻ってくる」などといった言い伝えがあり、このような教えは仏教にはありません。
このようなことから、日本固有の民俗的行事と仏教行事の「盂蘭盆(うらぼん)」が習合したものと考えるのが妥当なようです。

お盆は日本人の年中行事としてすっかり根をおろしていますが、お盆の行事の作法や内容そのものは年々忘れられてきているようです。

お盆の行事にはいろいろな植物が登場します。
・迎え火や送り火に焚くオガラ(苧殻または麻幹:皮をはいだ麻の茎を干したもの)
・盆棚に敷くマコモ(真菰:イネ科の抽水植物で、葉を編んでゴザにする)
・短く刈り揃えたミソハギ(禊萩:水に浸して供物をお祓いする)
・キュウリ(オガラで足をつけて馬に見立て、ご先祖様が馬に乗って早く帰ってこられるようにする)
・ナス(オガラで足をつけて牛に見立て、ご先祖様が牛に乗ってゆっくり戻っていけるようにする)
・その他に盆棚には、桔梗、なでしこ、おみなえし、ほおずきなど秋の野草を供えます。

でも、何故オガラやマコモやミソハギを使うのかはよく判っていないようです。
・マコモには浄化作用があるので、お釈迦様がその葉を編んでムシロを作りその上で病人を治療したという話が起源になっているようです。
・オガラすなわち麻は古い時代には大麻を指していたようで、大麻と同じようにその煙で幻覚的な状況を作り出して祖先をお迎えする(あるいはお送りする)といった意味合いがあったのではないかと思われます。
・ミソハギは漢方の生薬で千屈菜(せんくつさい)と言い、下痢止めや止血作用等の薬効があることから使われたのかもしれません。

現在では、これらの用具などは、スパーマーケットでも売られています。

なお、「盆踊り」は、もともとは「15日の盆の翌日、16日の晩に、寺社の境内に人々が集まって踊ること」を指していますが、現在では、必ずしもお盆の時期や寺社の境内とは限らない場合もあります。


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