多摩の緑爺の植物文化誌
8月:4.「葛(くず)」−有用植物?衣・薬・食

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クズ
「葛」は、「秋の七草」のひとつです。
万葉集の山上憶良の歌、
「秋の野に、咲きたる花を、指(おゆび)折り、かき数ふれば、七種の花」 「萩が花、尾花(すすき)、葛(くず)花、なでしこの花、おみなえし、また藤袴(ふじばかま)、朝貌(あさがお:ききょう)の花」
が、「秋の七草」の起源となっています。
「葛」が、万葉の時代から親しまれていたことをうかがわせます。
万葉集には、他にも詠われていて

「ま葛はふ 夏野の繁く かく恋ひば まこと我が命 常ならめやも」

などがあります。
「古今集」、「後撰集」、「山家集」や「新古今集」でも何首かで詠われています。
江戸時代にも、芭蕉の句,

「葛の葉の 面見せけり 今朝の霜」

などがあります。

葛は、古来有用な植物でしたが、長く伸びて他の植物などを覆うように生育するために、現代では嫌われることが多いようです。

長大に肥厚した塊根の皮を剥き、板状やサイコロ状に切って天日乾燥したものが生薬「葛根(かっこん)」で、葛根を主にして調剤された葛根湯(かっこんとう)は、良く知られた風邪薬です。
塊根の皮を剥いてすりおろして粥(かゆ)状にし、綿布などで漉して繊維などを除き、上澄み液を捨てることを繰り返して、残った白いデンプンを乾燥させたものが「葛粉(くずこ)」です。
葛粉で作る葛湯(くずゆ)には、寒気や熱などをとる効果があり、風邪などに用います。
また、葛粉(くずこ)は、くず餅や葛きりなどの和菓子にします。
古い時代には、茎から繊維をとって織った布「葛布」がよく使われたようです。
新芽や若葉を塩茹でして、和え物や炒めものにします。花も塩茹でして、テンプラなどにします。茎や葉は、家畜の飼料にします。

「葛布」は、夏の終わり長く伸びたクズの蔓(つる)を刈り取って土の中にしばらく埋め、外皮を腐らせ川(流水)にさらして芯の木質部から繊維を採取し、乾燥させた繊維を織って作ります。

なお、葛(クズ)の名は、大和の国(現在の奈良県)の国栖(くず)の人々が、この根から澱粉を取って、都で売ったことによるというのが定説です。


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