多摩の緑爺の
植物文化誌
8月:2.古来有名な薬草−「現の証拠」、「千振」、「毒矯」に「弟切草」
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日本では、遠い昔から野草を民間薬として利用してきました。その代表と言えるのが、「現の証拠(ゲンノショウコ)」、「千振(センブリ)」や「毒矯(ドクダミ)」です。
また、「弟切草(オトギリソウ)」も、その悲しい逸話とともに、よく知られた薬草です。
「現の証拠(ゲンノショウコ)」は、花期に地上部を天日乾燥させたものを煎じて、下痢、食あたりや胃腸病などに用いると顕著な効能があるとされています。
ただ、ゲンノショウコは江戸時代に入ってから用いられ始めたようで、それ以前の各種の本草書にはその名は現れていません。また、知られた詩歌や文芸などにも現れていないようです。
また、「現の証拠(ゲンノショウコ)」の名は、飲めばすぐに効能が現れるという意味で「現(験)の証拠」となったというのが通説です。
「千振(センブリ)」は、開花期の全草を日陰で乾燥させたものが生薬「当薬」で、苦味健胃薬として消化不良、胃痛、腹痛や下痢などに効能があるとされてきています。
また、「センブリ」の名は、苦味健胃薬として良く知られていて「千回振り出し(煎じる)」てもまだ苦いことによると言うのが定説です。
ただ、「千振(センブリ)」は、万葉集など知られた詩歌や文芸等にはその名は現れていません。
江戸時代の貝原益軒による「大和本草」などにはその名が現れています。
「センブリ」はリンドウ科の2年草ですが、リンドウの根を天日乾燥したものを生薬で「竜胆」と言い、これも名の知れた苦み健胃薬です。
「毒矯(ドクダミ)」は、「十薬(十種の薬効がある)」と呼ばれるように、古来良く知られた薬草です。全草に特有の臭気があります。
花を含めた全草を乾燥させたものが生薬「十薬(じゅうやく)」で、煎じたものに利尿、便通、高血圧予防、緩下作用、利尿作用や血圧降下などの効能があるとされています。
また、抗菌・殺菌効果もあります。生の葉を揉んで化膿や擦り傷などに用います。乾燥した葉をお風呂に入れれば、あせもや湿疹などに効能があるとされます。
なお、高温で熱すると特有の臭気は消えて食べられます。茎の先をその下の葉とともに摘み取って、少し高温のテンプラなどにして食用にします。
「弟切草」とは物騒な名前ですが、昔、秘密の薬草を用いて鷹の傷を治すことで有名な鷹匠(たかしょう)の兄弟がいましたが、ある時、弟がその薬草の名を漏らしたことに怒った兄がその弟を切り殺してしまったという伝説があります。その時の血しぶきがオトギリソウにかかって油点になったとされています。
オトギリソウは薬草としてよく知られていて、神経痛、リュウマチ、痛風などの鎮痛や月経不順などの内用薬・浴用薬、打ち身や外傷の外用薬に効能があるとされています。
江戸時代の貝原益軒による「大和本草」、あるいは「和漢三才図絵」などの本草書にオトギリソウの名が現れています。
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