多摩の緑爺の植物文化誌
7月:4.「とりもち」(鳥黐) −現在は禁止猟法、鳥刺し、伝統芸能

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モチノキ
「鳥黐(とりもち)」は、粘性物質で、木の枝などに塗り付けておいて野鳥などを捕獲するのに用います。
ただ、現在は、「狩猟禁止」となっている鳥類も捕獲してしまうので「禁止猟法」となっています。「カスミ網」も同様です。

「鳥黐(とりもち)」は、モチノキやその仲間の木から作られます。モチノキから採取するものが最良とされ本黐(ほんもち)と呼ばれ、他のモチノキ属の樹種(ソヨゴやクロガネモチなど)から採取するものを青黐(あおもち)と呼んで区別します。
ただ、モチノキやその仲間からだけではなく、ヤマグルマ科のヤマグルマ(別名:トリモチノキ)やスイカズラ科のガマズミなどからも作ります。ヤマグルマから作られる「鳥黐」は色が赤いので「アカモチ」などと呼ばれます。

「鳥黐(とりもち)」の製法は、地域や対象樹種などによって異なりますが、代表的な製法は次のような方法です。
春から夏にかけて樹皮を採取して、秋まで袋などに入れて流水に浸けて木質部分を腐敗させて除去します。水に不溶性の「鳥黐(とりもち)」成分が残るので、臼などで細かく砕いて繊維質をなくします。軟らかい塊になるので、それを流水で流しながら細かいクズなどを取り除けば「鳥黐」のできあがりです。
作った「鳥黐(とりもち)」は水につけると粘着性がなくなるので、水に浸けて保存します。取り出して乾かせば、再び強い粘着力をあらわします。
ソヨゴ
「鳥刺し(とりさし)」は、「鳥黐(とりもち)」を用いて野鳥を捕獲することを職業とする人々の呼び名です。また、「鳥黐(とりもち)」を用いて野鳥を捕獲する行為も「「鳥刺し(とりさし)」と呼ばれています。
「黐竿(もちざお)」は、「鳥刺し(とりさし)」が用いる代表的な道具で、長い竿(さお)の先に「鳥黐」をつけて、狙った野鳥をくっつけて捕獲する道具です。
また、木の枝に「鳥黐」を塗りつけ、「おとり」や「鳥笛」などで野鳥を呼び寄せ、くっつけて捕獲することも行われていました。

なお、江戸時代には、「鳥刺し」は「鷹匠」(鷹狩りを職業とする専門家)に仕えて、鷹の餌にする小鳥をとらえていたとのことです。

また、「鳥刺し」の様子を舞などにした「鳥刺し舞」や「鳥刺し踊り」が、各地に伝統芸能として残されています。


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