多摩の緑爺の
植物文化誌
6月:1.「変転の歴史をたどった紫陽花(あじさい)」
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梅雨時には、紫陽花(あじさい)の花が映えます。アジサイは日本原産で、古い時代から自生していたようですが、歴史的には一時期、1,000年ほどの間忘れ去られてしまったとしか思えない不思議なところがある植物です。
アジサイは万葉集(奈良時代後期:759年頃)には2首で詠われていますが、その後、源氏物語や枕草子、あるいは平安時代末期にいたる数々の和歌集には、一切登場しなくなってしまいます。
アジサイの生態のどこかに、文学にはそぐわないところでもあったのでしょうか?謎です。
一説には、アジサイは開花してから花の色が変わっていくことが移り気あるいは不道徳であると考えられたというものがあります。
「言(こと)とはぬ 木すらあぢさい 諸弟(もろと)らが 練りのむらとに あざむかえけり」 万葉集 大伴家持
江戸時代に入って、1823年に来日した、医師であり自然学者でもあったシーボルトは、アジサイを愛でて、後年に著した「日本植物誌」に十数種のアジサイを紹介しています。
さらに、シーボルトは、花全体が装飾花になる種を学名「Hydrangea otakusa」(ハイドランジア(英語読み) オタクサ)として記載しています。
しかし、この「オタクサ」がシーボルトの愛した日本人女性のお滝さんに因んだものではないかということで物議を醸したことでも有名です。
ただし、この学名はその後、有名な植物学者ツンベルグによって既に別の学名「Hydrangea macrophylla f. macrophylla」が記載されていたために無効になっています。
アジサイはヨーロッパに渡り、1790年頃にイギリス王立植物園に植えられ、欧州各地でも盛んに栽培され、品種改良も積極的に進められて、ピンク・赤・青などの多くの園芸品種が誕生しています。
近年、これらのアジサイが逆輸入され、セイヨウアジサイとして花屋さんの店頭を飾っています。
アジサイの名は、「藍色が集まった」を意味している「集真藍」(あずさい)から転訛したものという説が一般的です。
漢字名の「紫陽花」は、中国大陸では別種の植物の名であったものが誤ってあてられたもののようです。
なお、アジサイの名は、平安時代に編纂された日本最古の辞典とされる「倭名類聚抄」に和名「アズサイ(安豆佐為)」として現れています。
全体が半球形の装飾花だけからなるものを「アジサイ」と呼びますが、装飾花が花冠の周囲を飾る「ガクアジサイ」の品種または変種であるとされています。
なお、余り知られてはいませんが、アジサイの仲間は青酸性の物質を含んでいるために食べると中毒を起こします。
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