多摩の緑爺の
植物文化誌
5月:5.「ホオノキ」 −「ほほがしは」、「炊ぐ葉」、「扇」
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ホオノキは、万葉の時代から親しまれていたようです。「万葉集」にも、ホオノキが2首に詠われています。
「我が背子が 捧げて持てる ほほがしは あたかも似るか 青き蓋」
「蓋」は、「きぬがさ」で高貴な人の後ろからさしかける傘を意味しています。ホオノキの大きな葉にたとえています。
また、大伴家持は、
「皇神祖の 遠御代御代は い敷き折り 酒飲みといふそ このほほがしは」
古い時代にはホオノキの葉で酒を酌み交わしていたようです。
この2首の「ほほがしは」は「朴柏」で、「ホオノキ(朴の木)」のことです。
このように「かしわ」は、当時は「カシワ」の木だけではなく、古事記や日本書紀にも現れているように、古い時代には食物を盛ったり酒を酌み交わしたり、
あるいは、
「炊(かし)ぐ葉」すなわち「かしは」として料理したり包んだりする際に用いられた広い葉を持つ植物の総称だったようです。
ホオノキの葉は長さ30cm、幅15cmほどと大きく、表面が無毛で鋸歯がないので、このような用途に適しています。
また、ホオノキの葉には殺菌作用があり比較的火に強いことから、現代でも朴葉寿司、朴葉餅などに使われ、味噌や他の食材をのせて焼く朴葉味噌や朴葉焼きといった郷土料理にも使われています。特に飛騨地方の「朴葉味噌」は有名です。
ホオノキの材は、軽くやわらかくて加工しやすいことから、版木、楽器、下駄や刀の鞘などにも使われ、
「枕草子」には
「・・・枕上の方に、朴に紫の紙はりたる扇ひろごりながらある・・・」
の記述があり、朴の木が「扇」にも使われたことを伝えています。
ただ、当時は「扇」は涼を得るためのものというよりは、「扇」に和歌等を記し、想いを伝えることに使用されていたようです。
ホオノキは、モクレン科モクレン属の落葉高木で、5月ごろに径20cm近い大きな花を上向きにつけ、よい香りがあります。
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