多摩の緑爺の植物文化誌 |
5月:2.「柏餅」 −「炊(かし)ぐ葉」 |
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端午の節句に、「柏餅」を食べるのは日本独自の習俗です。
ただ、端午の節句に「柏餅」を食べるようになったのは江戸時代からであるとされています。「柏餅」自体は、安土桃山時代の文献に既に現れているようです。
「柏餅」は、上新粉と片栗粉を混ぜてつくった「しんこ餅」に、あんこをはさみ柏の葉で二つ折りに包んだものです。
柏の葉を使うのは、柏は新芽が出るまで古い葉が落ちないことから「子供が産まれるまで親は死なない」すなわち「家系が絶えない」という縁起からです。
カシワは、万葉集、新古今集や源氏物語にも現れています。万葉集に、
「皇祖神の とほ御代御代(みよみよ)は いしき祈り 酒(き)飲みきといふぞ 此のほほがしは」 大伴家持
があります。
また、源氏物語の第36帖の巻名に「柏木」があります。病に伏した「柏木」の没後に、その妻が詠んだ歌、
「柏木に 葉守の神は まさずとも 人ならすべき 宿の梢か」
に因(ちな)んでいます。
もともとは、「かしわ」は食物を包んだり蒸したりした植物の葉を意味し「炊(かし)ぐ葉」が転訛したものと言われています。
そこから「かしは」となり、カシワだけでなく、ホホガシワやアカメガシワなどにも「かしは」の名があります。
近畿以西では、カシワのかわりにサンキライ(山帰来:サルトリイバラの別名)の葉を使うこともあるようです。
なお、カシワはブナ科コナラ属の落葉高木です。「柏」は漢名ではヒノキ科のコノテガシワなどの常緑樹を指していて、和名をつける際に誤って使われたものです。
また、サルトリイバラ(猿採り茨)は、ユリ科シオデ属のつる性の落葉低木で、幹にはトゲがあります。秋に赤く熟す果実は放射球形になり美しいので、生け花の花材として使われます。
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