多摩の緑爺の植物文化誌 |
4月:2.「昔は見かけなかった?タンポポ」 |
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日本の春の原風景と言えばタンポポを思い出す人が多いと思います。
ですが、万葉集には詠まれていないようで、源氏物語や枕草子などにもタンポポの名前はでてこないようです。その後の和歌集などにもその名は現れていないようです。
当時の野山にはタンポポは少なかったとは考え難いので、昔は他の草花と同様に一種の雑草としてしか認識されていなかったのかもしれません。
ちょっと不思議な感じがします。
近代では、若山牧水の和歌がよく知られています。
「多摩川の 砂にたんぽぽ 咲くころは われにもおもふ 人のあれかし」
いずれにしても、関東以西では春の野山には黄色と白のタンポポが咲き乱れています。
しかし、明治時代以降には「セイヨウタンポポ」が、市街地から野山に普通に見られるようになっています。
ただ、セイヨウタンポポは、在来の他のタンポポの仲間によく似ていて見た目ではなかなか区別できません。タンポポの仲間は花の基部の総苞片の形態で区別します。
セイヨウタンポポが明治初期に渡来して、今では市街地のどこにでも普通に見られるようになっています。
セイヨウタンポポは、札幌農学校(現北海道大学)の教師であったブルックスが、蔬菜(野菜)として輸入したものが広がったと言われています。
ビタミンA・タンパク質・カルシウムやリグニン・イヌリン等の食物繊維が豊富なのになぜか日本では野菜としては普及しませんでした。
欧州では、サラダなどの材料として地方によっては栽培もされています。
なお、タンポポの仲間の花のテンプラは美味しいものです。
また、細くて長いタンポポの仲間の根を乾燥させて2cmほどに切り、炒ってから細かく刻むかすり潰してお湯を注ぎ「タンポポコーヒー」にします。
タンポポコーヒーには母乳の出をよくする効果があります。
セイヨウタンポポは、環境変化に強く、自家受粉によって種子を作ることができ、さらに春から初秋まで咲き続けて種子を散布するので繁殖力が強く、今やどこにでも見られます。
セイヨウタンポポが、在来のタンポポを圧迫しているという説がありますが、最近でも里山などでは普通に在来のタンポポは自生しています。
在来のタンポポの花は春にしか見られないので、秋まで花が目立つセイヨウタンポポのほうが優勢に見えるのかもしれません。
ただ、在来種とセイヨウタンポポの交雑種が増えているとは言われています。
セイヨウタンポポは、右の写真のように総苞片が強く反り返っていることで、在来のタンポポとは容易に見分けられます。
なお、タンポポの漢字名「蒲公英(ほこうえい)」は生薬名です。
根を含めた全草を乾燥させたものを、解毒、利尿、急性乳腺炎、できもの、感冒による発熱など炎症性の疾患、健胃、強壮剤、利尿剤などにと幅広く用います。
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