多摩の緑爺の
植物文化誌
3月:7.「アセビ」 −「万葉集」から「同人誌」や「ライブハウス」まで
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「アセビ」の名は、全体が有毒で、牛や馬がこの葉を食べると酔ったように足がふらふらになることから「足痺れ」から転訛したというのが一般的です
漢字名「馬酔木」も同様な意味からです。この「馬酔木」の表記は奈良時代には既に現われていたようです。
古い時代から身近な植物であったようで、万葉集にも10首余りで詠われています。
「磯の上に 生ふる馬酔木(あしび)を 手折らめど 見すべき君が ありと言はなくに」
「吾がせ子に 吾が恋ふらくは 奥山の 馬酔木の花の 今盛りなり」
「あしび成す 栄えし君が ほりし井の 石井(いわい)の水は 飲めど飽かぬかも」
などがあります。
ただ、その後の古今集などの多くの和歌集には詠われておらず、「アジサイ」と同様に数百年の間和歌の対象とはなっていなかったようで、不思議なところがあります。
なお、鎌倉時代に入ると「新選和歌六帖」に
「滝の上の あせみの花の あせ水に 流れて悔ひよ 罪のむくひを」
など数首で詠われていますが、ほとんがど悪い意味で詠われています。
「アセビ」の名は、同人誌、短歌誌やライブハウスなどの名前にもよく使われています。
伊藤左千夫が創刊した短歌誌「馬酔木(あしび)」はよく知られています。
ただ、植物学的な標準和名は「アセビ」ですが、文学やお店の名などでは「アシビ」がよく使われます。
古い時代には駆虫剤や殺虫剤などに使用されたようです。
現在でも庭木などとして好まれよく植栽されています。また、園芸品種も作出されています。
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