多摩の緑爺の
植物文化誌
3月:6.「カタクリ」 −「春の妖精」、「片栗粉」、「万葉集」
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万葉の時代から親しまれていたカタクリは、当時は「堅香子(かたかご)」と呼ばれていたようです。
万葉集にも、
「物部の 八十をとめ(乙女)らが 汲み乱ふ 寺井の上の 堅香子(かたかご)の花」 大伴家持(巻十九)
と詠われています。
カタクリを始めとして、イチリンソウ、ニリンソウやアズマイチゲなどのキンポウゲ科イチリンソウ属の草本やセツブンソウなどは、「春の妖精」(Spring Ephemeral:スプリング・エフェメラル)と呼ばれる一群の植物たちです。
落葉樹が葉を開く前の春先の陽光を受けることのできる間に、芽を出し、開花、結実して、根茎や鱗茎に栄養を貯え、落葉樹が新緑の葉を広げる5月末から6月上旬には、葉や茎も含めて全て地上からは姿を消します。
このように春の一瞬だけ地上に姿を現すので「春の妖精」です。
昔は、カタクリの鱗茎(球根)からデンプンを採って食用にしました。これが「片栗粉」です。
しかし、現在の片栗粉は、ジャガイモなどのデンプンから作られています。
カタクリはユリ科カタクリ属で、種子から発芽して開花するまでに8年近くかかります。
8年目くらいまでは毎年一枚の葉だけを出します。二枚の葉を出すと同時に花茎を伸ばしてあの美しい花を開きます。
また、地下の鱗茎は、毎年その下に新しい鱗茎が作られるために、鱗茎は徐々に深く潜っていって、開花時には地下30cmほどにも達します。
カタクリは、コナラなどの落葉樹の林床に群生し、腐葉土が厚く堆積した北側斜面を好んで生育することが多いようです。
恐らく、夏の陽光によって地中温度が高くなることを嫌うものと思われます。
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