多摩の緑爺の
植物文化誌
3月:5.「くろもじ」 −高級爪楊枝(つまようじ)
トップページへ戻る
文化誌トップへ戻る
高級な爪楊枝(つまようじ)のことを「くろもじ」と呼んだりします。これは、高級な爪楊枝を香りの良いクロモジ(黒文字)の木から作ったことによる呼び名です。
現代でも和菓子や料亭などでは、このクロモジの爪楊枝が添えられます。
ただ香りがよいというだけではなく、クロモジには近縁の仲間のクスノキなどと同様にその精油成分に殺菌力があり、歯の衛生にもよいという裏づけもあるようです。
クロモジは、萌芽力が強く、枝を伐っても3年ほどでもとに戻るので再び伐って循環型利用されています。
通常の市販の爪楊枝は、成長が早くて材としての価値が相対的に低いシラカバなどから作られています。
「楊枝」は、奈良時代に仏教とともに伝来したとされています。「爪楊枝」は、爪の先の代わりとして使う楊枝を意味しています。
もともと楊枝は、木片の先端を毛筆の毛先のように加工した歯木(はぎ)として、歯の掃除をするためのもので、材料としては柳や桃、あるいは竹などが使われていたようです。現代の歯ブラシの原型です。
爪楊枝の材料としてクロモジが使われ始めた時期ははっきりとしていないようです。
江戸時代には、小藩のために財政が苦しかった上総の国の久留里藩(現在の千葉県君津市)で、付近に数多く自生していたクロモジを材料にして藩士が「小楊子削り」をしていたという記録があります。
現在でも、久留里の爪楊枝は「雨城(久留里城の別名)楊枝」として名産品となっています。
クロモジは、クスノキ科クロモジ属の落葉低木で、早春に新葉が開き始めると同時に淡黄色の小さな花を枝先に群がらせます。
黒文字の名は、若い枝に黒い斑点が多くあるので、まるで文字が書かれているように見えるからという説が一般的です。
ただ、昔はその樹皮の色からクロキと呼ばれ、宮中につかえる女房言葉で語尾に「もじ」をつける「何々もじ」から、この木を材料とした爪楊枝をクロモジと呼ぶようになったという説もあります。
トップページへ戻る
文化誌トップへ戻る