多摩の緑爺の植物文化誌 |
3月:2.「神の木、サカキ、ヒサカキ」 |
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神事や祭礼の際に玉串(たまぐし)を捧げます。これは、供物を神に捧げる作法を玉串によって簡略化したもの、あるいは、神棚に立てて神の依代(よりしろ:神が降臨される際に宿られる場所)としたものです。
玉串は、葉をつけたままのサカキ(榊)の小枝に、紙垂(しで:白い紙に三つの切れ目を入れて四折りにしたもの:注連縄の項参照)を垂らしたものです。
ただ、サカキ(榊)は、暖地性の木本で、分布は関東南部(暖地)以西であるために、関東以北では、サカキの代わりにヒサカキ(姫榊)を用います。
玉串は、枝元が手前がわにくるように小枝の中央を捧げもち、祭壇に進んで時計回りに半回転させて、枝元を祭壇の方向に向けて捧げます。このあと、二拝二拍手一拝(または二礼二拍手一礼)します。
なお、葬儀の際には、この拍手(かしわで)は「忍び手」と言って、手を合わせるときに音を出さないようにします。
「榊」は、このように神事に用いられることからの国字です。「栄木」をあてることもあるようです。古事記や万葉集では「賢木」があてられています。
ただ、この「賢木」は必ずしもサカキではなく松や杉などでもあったという説もあります。
サカキは、ツバキ科サカキ属の常緑の小高木で、葉の表面には照りがあります。いわゆる照葉樹です。葉は全縁(葉に鋸歯がない)です。
これに対してヒサカキは別属(ヒサカキ属)で葉には細かい鋸歯があることで、サカキとは容易に区別できます。サカキと同様に常緑の小高木です。
なお、サカキの花は白色で5月〜6月に咲きますが、ヒサカキの花は暖温帯では早春3月に咲きます。早春に咲くヒサカキの花は淡黄色で、サカキの花よりもふたまわりほど小さく、小枝にびっしりとつけます。秋に黒く熟す小さな果実は小鳥たちの好物です。
また、サカキの冬芽は、鷹などの猛禽類の爪のように強く曲がっていることも特徴のひとつです。
ヒサカキには「姫榊」の漢字をあてるのが一般的ですが、榊に似ていて異なるので「非ず」(あるいは「否ず」という意味の「非榊」(あるいは「否榊」)をあてることもあります。
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