多摩の緑爺の植物文化誌 |
2月:2.「立春」 −如月(きさらぎ)の桜? |
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立春(2月4日頃)が過ぎると、春の息吹がそこここに感じられる季節が巡ってきます。
2月は旧暦では「如月」(きさらぎ)とよばれていましたが、如月と言えば西行法師の辞世の句と言われている
「願わくは 花のもとにて 春死なん その如月(きさらぎ)の 望月(もちづき)のころ」
が有名です。でも実際には歌集「山家集(さんかしゅう)」におさめられている一首で六十二歳ごろの作のようです。
春二月の望月(満月)のころに満開の桜の花のもとで生涯を終えたい、との意味のようですが、この桜は一体どのサクラなのか現代では時期的にちょっと不思議です。
でも如月は現在の暦では3月で、望月(満月)のころは旧暦2月15日ごろですから、現代の暦で言えば3月24日ごろにあたります。この頃にはサクラも咲いています。
西行法師はどの桜を思い浮かべてこの歌を詠んだのでしょうか。
現代では「桜」と言えば「ソメイヨシノ(染井吉野)」ですが、「山家集」は平安時代末期に編纂されていますから、江戸時代に園芸的に作出されたソメイヨシノであるとは考えられません。
時期的にはお彼岸のころに開花する「エドヒガン」なども考えられますが、当時は「桜」と言えば「ヤマザクラ」でしたから、恐らくヤマザクラの花を詠ったものであろうと思われます。
事実、万葉集には40首余りで桜が詠まれていますが、全て「ヤマザクラ」であるとされています。ただし、いくつかは、オオヤマザクラであるとする説もあります。
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