多摩の緑爺の植物文化誌 |
6.「人日(じんじつ)」 −七草粥/春の七草 |
トップページへ戻る
文化誌トップへ戻る
旧暦の1月7日の「人日(じんじつ)」は、「七草節句」といって、この日に「七草」を使った「七草粥(ななくさがゆ)」を作って食べ、その1年の無病息災を願う風習があります。
この風習は平安時代に始まったという説がありますが、当時は七種の穀物で作った粥であったようです。
「春の七草」は「芹(せり)、なずな 御形、はこべら 佛の座、すずなすずしろ これぞ七草」の歌が元になっているというのが定説ですが、この歌がいつ頃誰によってつくられたかは、諸説はありますがはっきりとしてはいません。
いずれにしろ厳冬期の1月初にどうやってこれらの植物の若葉を摘んだのか、少し不思議です。
しかし、この習俗が生まれた頃は「旧暦」だったはずなので、「人日」は現在の暦では概ね2月初旬頃になります。その頃になれば、これら七草の若葉も摘めます。
・セリ(芹)はセリ科セリ属
・ナズナ(薺)はアブラナ科ナズナ属
・オギョウ(御形)はハハコグサのことでキク科ハハコグサ属
・ハコベラ(繁縷)はナデシコ科ハコベ属でコハコベやミドリハコベ
・佛の座(ホトケノザ)は「コオニタビラコ(小鬼田平子)」のことでキク科ヤブタビラコ属、
−なお、現在の「ホトケノザ」はシソ科オドリコソウ属の越年草で全く別種です。子どもたちが花の蜜を吸って遊びますが、葉などは食用にはしません。
・スズナはカブのことでアブラナ科カブ属
・スズシロはダイコンのことでアブラナ科ダイコン属
平安時代の後期の文献に「君がため 夜越しに摘(つ)める 七草の なづなの花を 見てしのびませ」の歌があるようです。
このような早春の「若菜摘み」は、万葉の時代からの習俗であったようで歌に現れています。
古今集(百人一首)の1首、 「きみがため 春の野にいでて わかな(若菜)つむ 我衣手に 雪はふりつつ」 はよく知られています。
また、ハハコグサは「母子草」の漢字をあてて、母と子のなか睦まじい様子を連想させますが、ハハコグサは全草が柔毛に覆われていて、この様子を古語で「ほほける」と言い、そこから「ホウコ草」となり、現在の「ハハコグサ」に転訛したものと言われています。
さらに、「ハコベ」の名前は、茎や葉をこじんまりと広げる様子を「葉配り」と呼び、これが万葉集では「波久倍良(ハクベラ)」に転訛して登場し、更に転訛して「ハコベ」になったという説があります。
ただし、「波久倍良」の名は平安時代に編纂された日本最古の本草書である「本草和名」に初めて現れたもので、万葉集には現れていないという説もあります。
ハコベの漢字名「繁縷(はんろう)」は、生薬名です。
トップページへ戻る
文化誌トップへ戻る