多摩の緑爺の植物文化誌
1月:5.「羽子板」 −ムクロジにツクバネ

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羽子板は、室町時代のころに中国から伝来したと言われています。 当初は羽根突きの遊具として用いられました。
しかし、その後には、厄払いや魔除けとしてお正月に女の子に贈る習俗が定着しました。

江戸時代に入ると、歌舞伎役者などをかたどった押絵羽子板も現れ、東京の伝統工芸品に指定されています。

羽子板で突く羽根の黒くて堅い玉は、ムクロジ(ムクロジ科ムクロジ属の落葉高木)の種子です。「無患子」(むくろじ)の漢字をあて、「子が患わ無い」として無病息災のお守りとしました。

また、ムクロジの果実の果皮や果肉は、水をつけて揉むと沢山の泡がでてきます。昔は、この果皮や果肉を石鹸のかわりに使いました。
なお、サイカチ(日本特産のマメ科の落葉高木)の種子のサヤを煎じた液も、洗髪石鹸として利用されました。
さらに、エゴノキの果皮には、天然の界面活性剤であるサポニンを多く含み泡立つので、ムクロジ同様にエゴノキの果皮も石鹸として利用されました。

また、羽子板の羽根は、その形にそっくりな果実をつける木の名前の由来ともなっています。「ツクバネ」(衝羽根)(ビャクダン科ツクバネ属の落葉低木)です。その果実には、4枚の細長い大きな苞が付いていて羽子板の羽根によく似ています。


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