多摩の緑爺の植物文化誌 |
12月:1.「八つ手」 −福を招き、邪気を払う |
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「ヤツデ」は、日本固有種です。
日本の山野には、普通に自生していますが、江戸時代に至るまでは、各種の文献や歌などには現れていません。
江戸時代に貝原益軒によって編纂された「大和本草」(やまとほんぞう)にその名が現れます。
「八つ手」の名は、掌状の葉を人の手にたとえて、指が8本あるという命名ですが、実際には9裂または7裂で、指に相当する部分は七つ手または九つ手です。
古来、「八」の漢字は「末広がり」で縁起が良い数字とされていたために「八つ手」と名付けられたようです。
恐らく江戸時代以降であろうと思われますが、
この縁起のよい「八」の名を持つヤツデの掌状の葉を「福を招く」として、玄関脇によく植栽されるようになっています。
また、「鬼の手」や「天狗の葉うちわ」などとして、災厄を払うという意味で庭の鬼門の方角にもしばしば植栽されます。
「鬼門」は、普通は家の中心から北東の方角とされます。また、南西方向を裏鬼門とすることもあります。
なお、「ヤツデ」は、初冬に開花し冬に結実するという珍しい生活誌を持った植物です。
これは、初冬では花粉を媒介する昆虫などがいないように思われますが、ちゃんとハエなどによって花粉は媒介されています。
他の植物が開花していない時期に花をつけて、花粉を媒介する昆虫などを独占しようとする生存戦略であると言われています。
さらに、よく知られてはいませんが、ヤツデの葉などには少量の有毒物質が含まれているので、多量に食べると下痢などを惹き起します。
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