多摩の緑爺の植物文化誌
1月:2.「お屠蘇(とそ)」 −全て植物生薬

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サンショウの果実
「お屠蘇」は元旦に家族そろっていただく一種の薬酒です。でも都会では最近では、このような行事というか習俗もすたれてきているようで、少し残念な気もします。

「屠蘇」の起源は中国の唐時代の薬酒で「鬼気を屠絶し人魂を蘇生させる」ということからきています。
そこから、1年中の邪気を払い、延命長寿を願う習俗として元旦の作法となったようです。

お屠蘇は、数種類の生薬を調合した「屠蘇散」を日本酒などに一晩漬け込んで作りますが、この生薬は全て植物です。

屠蘇散の生薬成分は、一般的には、白朮(ひゃくじゅつ)、蜀椒(しょくしょう)、防風、桔梗、桂皮、乾姜(かんきょう)などのようです。

・白朮はキク科のオケラの根
・蜀椒はミカン科サンショウの別名でその果実
・防風(ぼうふう)はセリ科イブキボウフウなどの根
・桔梗(ききょう)は名の通リキキョウでその根
・桂皮(けいひ)はクスノキ科のニッケイなどの樹皮
・乾姜はショウガ科のショウガなどの根

これだけいろいろな科の植物の薬効を見出しただけでも凄いと思いますが、この組み合わせを編み出した先人の知恵にも驚かされます。
もともとは,

・「烏頭(うず)」、すなわち猛毒のキンポウゲ科のトリカブト
・「大黄(だいおう)」すなわち下剤として用いられるタデ科ダイオウ属の植物の根茎

ツクバトリカブト
も含まれていたようですが、作用が激しいために用いられなくなったようです。
もし、トリカブトが入っていたら到底飲む気にはなれないでしょうね。それこそ御屠蘇気分も吹き飛びます。


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