多摩の緑爺の植物文化誌
10月:6.「葛籠(つづら)」 −アオツヅラフジ(青葛藤)、衣装箱

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アオツヅラフジ
葛籠(つづら)は、もともとは、ツヅラフジの蔓(つる)で編んだ蓋(ふた)つきの長方形の(衣装)の箱を指します。
遠い昔から植物の蔓(つる)で編んだ籠が作られて、物品の運搬に使用されてきています。ツヅラフジで作られた葛籠(つづら)は正倉院に所蔵されています。
平安時代には、竹の加工技術が確立され、竹も素材として使われるようになっています。
江戸時代には、婚礼の道具の一つとして規格化(長さ90cmほど、幅50cm強、高さ50cm弱)され、庶民に普及するようになったようです。
ただ、昭和時代に入ってからは、他の箱にとって代わられています。今では、旧家などに残されているだけです。

「アオツヅラフジ」は、ツヅラフジ科のツル性の木本で、古い時代から葛篭(つづら)の素材として利用されていたようです。
その名は、果実が濃藍色でツルをツヅラの材料にすることからの命名です。「フジ」はフジヅルに似ているという意味、あるいはツヅラの材料にフジヅルも使用したことによるようです。

「アオツヅラフジ」は、古い時代から、人の生活に近い植物だったようです。
万葉集にある、

「かみつけの 安蘇山つづら 野を広み 延ひにしものを 何か絶えせむ」

の歌の「つづら」は、アオツヅラフジであるとされています。
また、古今和歌集の、

「梓弓 引き野のつづら すゑつひに わが思ふ人に 言のしげけん」

の「つづら」も、アオツヅラフジであるとされています。

なお、アオツヅラフジのヤマブドウに似た濃藍色の果実は有毒です。


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