多摩の緑爺の
植物文化誌
10月:4.和歌「八重葎(やえむぐら) 繁れる里の…」は「カナムグラ」!
トップページへ戻る
文化誌トップへ戻る
平安時代に編纂された「拾遺和歌集」に収録され、「百人一首」にも選ばれている、
「やえむぐら 茂れる宿の さびしさに ひとこそみえね 秋は来にけり」
の和歌に詠われた「ヤエムグラ」は、クワ科(またはアサ科)のツル草「カナムグラ」であるとされています。
詠われた季節が秋であることから、春に開花し夏には結実して枯れてしまうアカネ科の「ヤエムグラ」と考えるには確かに無理があります。
ムグラ(葎)は、群がるように生育する草の総称です。
万葉集にも、
「思う人 来むと知りせば 八重むぐら 覆(おお)へる庭に 玉敷かましを」
の歌があり、「思う人が来ると知っていたならば、庭に繁茂している八重むぐらを綺麗にしておきますものを・・・」
の意味のようですが、覆うように繁茂していることから、アカネ科のヤエムグラではなく、「カナムグラ」であると考えられています。
「ヤエムグラ」は、草丈60cmほどの1年草でツル性ではなく、群生はしますが覆うようにはなりません。
これに対して「カナムグラ」はツル性の1年草で、路傍や荒地にしばしば生育し、覆うように繁茂します。茎の細かい逆トゲで他物に絡みつき繁茂する様子はどこか粗野で荒れ果てた印象を与えます。秋に、目立たない緑色の果穂をつけます。
源氏物語にも「ヤエムグラ」が現れていますが、荒れた庭を象徴するように記載されていますので、やはり荒れた場所に繁茂するカナムグラであると考えられています。
枕草子に現れる「ヤエムグラ」も同様であると考えられています。
トップページへ戻る
文化誌トップへ戻る