多摩の緑爺の植物文化誌
10月:1.高野山の箒(ほうき) −コウヤボウキ

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コウヤボウキ
草のように見えますが矮小な低木で、高さ50cmほど、時に1m近くになります。
初秋から秋に、本年枝の先に1個の白から淡白紫色の頭花をつけます。花被片は糸状で、ほつれた絵筆の先のようになります。

叢生する細い茎は、丈夫でしなやかなので、高野山で束ねて儀式などに使う箒(ほうき)に使用したことから「コウヤボウキ」です。
昔は、高野山では竹箒(ほうき)の使用を禁じていたので、このコウヤボウキが利用されたようです。

京都伏見の造り酒屋では、桶に付いた「にごり」の泡をとるのにコウヤボウキをつかうとのことです。
10数本ほどのコウヤボウキの枝に竹の小枝を数本束ねると、適度に弾力があって、泡をとるのに便利だとのことです。

万葉集に2首に現われる「玉掃(たまばはき)」は、このコウヤボウキであるとされています。

「玉掃(たまばはき) 刈り来鎌麻呂 むろの木と 棗が本と かき掃かむため」
「初春の 初子の今日の 玉箒(たまばはき) 手に取るからに 揺らく玉の緒」

があります。その後の歌集などには、その名は現れていないようです。
なお、「玉掃(たまばはき)」は、箒(ほうき)を指すようです。


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