■特徴・分布・生育環境
草丈1m前後になるやや大型の多年草です。
茎は斜上することが多い。
湿生地に自生します。
このサワヒヨドリは、仲間(同属)のヒヨドリバナとの自然交雑が多く判断が難しい。
茎が明瞭な紫色を帯びるのが普通です。ただ、時に淡紫色〜緑色に近い個体があります。これらはヒヨドリバナとの自然交雑の可能性が高い。
初秋から秋に茎頂に、浅い皿型に小さな花を密に多くつけます。
花は、白色〜淡紫色です。
花は全て筒状花で花被片はなく、花糸が長く糸がほつれたようになります。
葉は披針形〜狭楕円形で葉先は鋭三角形状です。見た目では細身に見えます。稀に3深裂する葉があることもあるようです。
葉の大きさには大小があります。大きな葉で長さ10cmほど、幅2cmほどです。
葉の縁には、粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。
普通は葉柄はありません。ただ、時にごく短い葉柄があります。
なお、ヒヨドリバナの葉は卵状長楕円形(葉身の基部の方が幅広)〜長楕円形で見た目でも幅広に見えます。
日本各地から朝鮮半島・中国大陸に広く分布します。
多摩丘陵では普通に見られ、個体数は多いほうです。
■名前の由来
しばしば「ヒヨドリ」の名は「野鳥のヒヨドリが鳴くころに咲くから」という説明がされていますが、ヒヨドリの鳴き声をよく聞くのは晩秋から冬なので、ちょっと無理があるようです。
万葉集や江戸時代の本草書にもヒヨドリバナ、サワヒヨドリやヨツバヒヨドリの名は現れておらず、いつ頃から「ヒヨドリ」の名が使われ始めたかも不明です。
万葉集に現れる「澤蘭(さはあららぎ)」が「サワヒヨドリ」であるとする説がありますが、いずれにしても「ヒヨドリ」の名では現れてはいません。
命名の由来はよく判ってはいないというのが本当のところのようです。
■文化的背景・利用
万葉集の巻19に現れる詞書(ことばがき)に「天皇と太后と共に大納言藤原家にいでます日、黄葉せる澤蘭(さはあららぎ)一株抜取り、・・・」の「澤蘭」は「サワヒヨドリ」であるという説があります。
江戸時代の大和本草などにも「沢蘭」とされていて「ヒヨドリバナ」や「サワヒヨドリ」の名では現れてはいません。
知られた詩歌や文芸にも現れてはいないようです。
■食・毒・薬
民間薬として、全草を煎じたものが解熱や咳止めに効能があるとされています。
仲間(同属)のフジバカマにはアルカロイド系の有毒成分が含まれ、このヒヨドリバナやサワヒヨドリにも同様な有毒成分が含まれるという報告があります。
花蜜にも有毒成分が含まれるという報告があります。
したがって、食用にするのは危険です。
■似たものとの区別・見分け方
この仲間は、草姿や花穂の態様が似ています。また、花色が白色〜淡紫色など変異があります。
したがって、見分け難いところがあります。葉の態様や茎の色なども確認する必要があります。
〇仲間(同属)のフジバカマとは花の印象は似ていますが、フジバカマでは葉が基部まで3深裂していて細長い葉を三つ並べているようになっていることで容易に区別できます。
〇ヒヨドリバナは、葉が卵状長楕円形(葉身の基部の方が幅広)〜長楕円形で見た目でも幅広です。
また、ヒヨドリバナでは茎は淡緑色〜淡緑褐色です。
〇サワヒヨドリは湿性地に生育します。葉が10cmほどのやや細い披針形であることで区別できます。見た目でもやや細身の葉に見えます。
また、サワヒヨドリでは茎が明瞭な紫色を帯びるのが大きな特徴です。
〇ヨツバヒヨドリでは葉が茎に4枚輪生状につくので容易に区別できます。
〇およそ100年ほど前に渡来した外来種マルバフジバカマでは、集まってつく頭花の筒状花の数が20個ほどと多い(ヒヨドリバナやフジバカマではひとつの頭花の筒状花の数は5個程度)ので花の印象が随分違います。
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写真は「花」、「花穂」、「葉」と 「茎:明瞭に紫色」の4枚を掲載 |
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サワヒヨドリの花 |
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サワヒヨドリの花穂 |
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サワヒヨドリの葉 |
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茎:明瞭に紫色を帯びる |
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