フジバカマ(藤袴)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

フジバカマ(藤袴) キク科ヒヨドリバナ属
学名:Eupatorium fortunei

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■特徴・分布・生育環境
環境省指定の絶滅危惧II類(絶滅の危機が増大している種)です。   
後述するように「秋の七草」のひとつです。

草丈1mほどになる多年草です。

葉が基部まで三深裂していて細長い葉が3枚並んで付いているように見えるのが特徴です。
ただ、現在では園芸品種が作出されていて、この特徴だけではフジバカマであると断定はできません。
サワフジバカマなどとの園芸品種である可能性があります。

花は、小さな筒状花が5個ほどで頭花を構成し多くの頭花を浅い皿型(散房状)につけます。
秋に咲き淡い紫色で開花すると花糸(おしべ)がほつれたような形態になります。

どちらかというと湿性のある場所を好みます。
日本では主に関東以西に分布し、朝鮮半島から中国大陸に分布します。
奈良時代以前の古い時代に中国から渡来したという説が一般的ですが、日本にも自生していたという説もあります。

多摩丘陵では、遠い昔は判りませんが、自生は確認されていません。
まれに、人家周辺に保護されて植栽されていることがありますが、まず園芸品種です。

■名前の由来
花色が藤色で個別の花の形が袴に似ていることからこの名前になったというのが一般的です。
ただ、万葉集で既に「ふじばかま」とよばれていることから、名の由来は違っていた可能性もあります。

■文化的背景・利用
花などに香りはありません。
ただ、乾燥させると生乾きの状態でクマリンなどの成分を生じて芳香を発するとのことですが、確認できていません。
園芸品種もつくり出されていて、通常庭などに植栽されているものはほぼ全て園芸品種です。
園芸品種では花色に赤みが強いようです。なお、新潟県の「OHMY氏」の調査研究によれば園芸品種では冠毛がやや短いとされています。

万葉集の山上憶良の歌
「秋の野に 咲きたる花を 指(おゆび)折り かき数ふれば 七種の花」
「萩が花 尾花(すすき) 葛花(くず) なでしこの花 おみなえし また藤袴(ふじばかま) 朝貌(あさがお:ききょう)の花」
が、「秋の七草」の起源となっています。フジバカマが万葉の時代から親しまれていたことをうかがわせます。

日本書紀にもその名が現れています。
平安時代の「和名類聚抄」や「本草和名」にもその名が現れています。
古今集、西行法師による「山家集」や「新古今集」など多くの和歌集などに、フジバカマが詠われています。
平家物語や徒然草などにもその名が現れています。
源氏物語の30帳は「藤袴」となっています。

■食・毒・薬
現在では種としてのフジバカマに出会うことはまずありません。
園芸店などで「フジバカマ」とされているのは園芸品種で、薬効は確認できていません。逆に有毒である恐れもあるので民間での使用は禁止です。

フジバカマは、漢方では、利尿、通経や黄疸などに効能があるとしています。
ただし、花蜜にアルカロイド系の有毒成分を含むとのことです。
いずれにしても、漢方で薬用にされることから食用にするのは避けるべきです。

■似たものとの区別・見分け方
仲間(同属)のヒヨドリバナサワヒヨドリやヨツバヒヨドリの花や、およそ100年弱前ほどに渡来したマルバフジバカマに花が似ています。
しかし、これらとは葉が三深裂していないことで区別できます。    
  
写真は「フジバカマの花」、「花」(園芸品種)と
「花と葉」(園芸品種)の3枚を掲載
フジバカマ
フジバカマの花
(新潟県のOHMY氏提供)
冠毛がやや長い
フジバカマ
フジバカマ(園芸品種)の花
フジバカマ
フジバカマ(園芸品種)の花と葉