■特徴・分布・生育環境
半日陰になる林縁や明るい林床などに、他の植物に巻きついて生育するツル(蔓)性の多年草です。
夏(〜初秋)に淡紫色の5弁の花を多くつけます。花序は葉腋につき、花柄の先で数個に分岐してその先に径5mmほどの小さな花をややまばらにつけます。5枚の花被片はやや幅広の三角形状で星型です。よく見ると花被片の喉元に濃紫色のごく小さな副花冠があります。
葉は茎に、対生(対になってつく)し、普通長さ5〜12cmほど、時に長さ17cmを越える大きな細長い三角形状(広披針形)で、葉の基部は狭いU字型なのが特徴のひとつです。
花後に、長さ5〜7cm、幅7mm前後の狭披針形(とても細いとんがり帽子のような形)の対になった袋果をふたつつけます。袋果は通常180度に開きますが、時に狭いこともあります。後述する似た近縁(カモメヅル属)のコバノカモメヅルでは、袋果は1個なので、よい区別点になります。
日本各地に分布します。
多摩丘陵では個体数が大変少なく、めったに出会えず、稀少種となっています。なお、多摩丘陵は里山なので、草刈が入ることも影響していることもあります。
この2013年現在、この20年ほどの間に2個体しか確認できていません。もっとも、林縁にはヘクソカズラなどのツル植物が密にからみついているので見落としていた恐れもあります。
■名前の由来
「カモメ(鴎)」の名は、対生する葉の形態をカモメの翼にたとえたものという説が一般的です。
「オオ(大)」は、花は近縁(カモメヅル属)のコバノカモメヅルよりもかなり小さく、葉もそれほど大きくはないものもあるので、「大きい」の意味はよくわかりません。
ただ、仲間(同属)によく似たコカモメヅルがあり、オオカモメヅルでは長さ15cmを越える大きな葉もあるのに対して、コカモメヅルでは葉は長さはせいぜい6〜8cmほどなので、この両者を対比させて「大(おお)」と「小(こ)」とされたのかもしれません。
■文化的背景・利用
知られた詩歌や文芸などに、その名は現れていないようです。
■食・毒・薬
有毒であるという報告も、薬用にするという報告もないようです。
このような場合、食用にするのは避けるべきでしょう。
■似たものとの区別・見分け方
〇この科を代表するガガイモも、多摩丘陵に稀に自生しますが、ガガイモの花は花被片が肉厚で密に毛があることで容易に区別できます。
〇多摩丘陵には、似たものとして近縁(カモメヅル属)のコバノカモメヅルがごく稀に見られますが、オオカモメヅルよりも花が一回り大きく、花被片が細く綺麗な星型であることで区別できます。また、オオカモメヅルの花は淡紫色であるのに対して、コバノカモメヅルでは暗紫色です。さらに、オオカモメヅルの袋果は2個が対になってつきますが、コバノカモメヅルでは1個だけです。
また、コバノカモメヅルは日当たりのよい草地などに生育しますが、オオカモメヅルは、半日陰になる林縁や明るい林床に生育します。
よく似た仲間(同属)のコカモメヅルでは、花序の基部の花柄(総花柄)が長く、またその先で枝分かれする花柄(小花柄)がやや離れてつくので、花序全体が大きく見えます。オオカモメヅルの花序では花柄(小花柄)は小さくまとまっています。
植物学的には、オオカモメヅル属では花粉塊は小さな円板状で直立するのに対して、コバノカモメヅルが属するカモメヅル属では花粉塊は柄でぶらさがることで同定します。
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写真は「花」、「果実」と「葉」の3枚を掲載 |
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オオカモメヅルの花 (花柄がまとまっている) |
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オオカモメヅルの果実 |
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オオカモメヅルの葉 |
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