ニオイカントウ(匂款冬)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ニオイカントウ(匂款冬) キク科フキ属
学名:Petasites fragrans

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■特徴・分布・生育環境
昭和初期に観賞用に渡来したとされる外来種です。地中海沿岸の原産です。

丈5cmほどの茎の先に径5〜12cmほどの円形の葉をつける多年草です。
フキを小型にしたような草姿です。フキの仲間(同属)です。
「款冬(かんとう)」はフキのことです。

早春に高さ10cmほどの花茎を立てて、茎頂で小さく枝を分けてそれぞれの先に房状に多くの花をつけます。花色は淡紫色です。花には芳香があります。

多摩丘陵では、稀に人家周辺や公園などに植栽されています。多くの場合群生します。

■名前の由来
草姿がフキ(蕗)に似ていて、芳香があるので、蕗の別名「款冬(かんとう)」を当てて「ニオイカントウ(匂款冬)」です。

なお、フキの名は、葉が大きくて風で揺れやすいことから「葉吹き」などが転訛したなど諸説ありますが、定説はありません。なお「古い名」として「ふふき」があるようです。

■文化的背景・利用
昭和初期に渡来した外来種なので、知られた本草書や文芸などには、その名は現れていません。
華やかさはありませんが、山草愛好家には好まれるようでよく栽培され、しばしば山草園などに植栽されています。

なお「蕗」は、平安時代の「本草和名」などにその名が現れています。
また、江戸時代の「本草綱目啓蒙」や貝原益軒による「大和本草」などにも「蕗」の名が現れています。
蕪村や一茶の句集にも「蕗」が詠われています。 

■食・毒・薬
フキ(蕗)では、葉柄や葉を食用にし、また花の蕾は、昔から蕗の薹(ふきのとう)と呼び山菜としてテンプラや味噌であえて焼くなどして、独特の風味を賞味しますが、ニオイカントウは食用にはしないようです。
薬用にはしないようです。

■似たものとの区別・見分け方
〇この仲間を代表するフキとは、草姿がかなり小型であること、また花色が淡紫色であることで容易に区別できます。

〇草姿が似たものにツワブキがありますが、ツワブキの葉の表面には明瞭な艶(つや)があり、花も黄色で明瞭な花弁(舌状花)があります。ただ、ツワブキはフキとは別属のツワブキ属です。
ツワブキは、よく詩歌に現れますが、古い時代のものはなく「庭に干す土人形や石蕗(つわぶき)の花」(正岡子規)など近世のものです。なお、有名な佃煮「キャラブキ」はツワブキの若い茎をよく煮込んで作ります。    
  
写真は「早春の花」、「全体」と「葉」
の3枚を掲載
ニオイカントウ
早春の花
ニオイカントウ
ニオイカントウの全体
ニオイカントウ
ニオイカントウの葉