ニガイチゴ (苦苺)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ニガイチゴ (苦苺) バラ科キイチゴ属
学名:Rubus microphyllus

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■特徴・分布・生育環境
落葉低木で、高さ30〜50cmほど、時に1mほどになります。茎はしばしば伏していて、茎には細いトゲが多くあります。
  
花は春に咲き、葉腋につけて茎に並べます。花は径2cm前後の白い5弁花で、上向きに咲き枝上に並べます。花弁は狭楕円型で、とても細いものが多いようです。
果実は夏に熟し、赤色の径1cm前後の球形で、つぶつぶになっています。

名の「苦」は、果実の種子(核)に苦みがあるとして名付けられていますが、必ずしも苦いとは言えないようです。果実は甘くて結構美味しい。
葉は、花(果実)がつく枝では小さく長さ2〜5cmほどの広卵型でほとんど裂れ込みはありません。花(果実)がつかない枝ではやや大きく長さ6〜10cmほどで3裂しています。葉の縁には粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。

本州以西〜中国大陸に分布します。
多摩丘陵では、明るい林縁や林床などに自生しますが、2015年現在では自生地は少なく限られています。

■名前の由来
上述の通り、果実の種子(核)に苦みがあるとして名付けられています。ただし、必ずしも苦いとは言えないようです。果実自体は甘くて美味しい。

■文化的背景・利用
「イチゴ」の名は、江戸時代まではキイチゴの仲間を指していたようで、本草書などには「以知古」の名が現れています。
江戸時代までは、このニガイチゴ、後述のクサイチゴ、ナワシロイチゴ、モミジイチゴやカジイチゴなどは区別して記載されておらず、明確に区別されてはいなかった可能性もあります。

平安〜鎌倉時代の西行法師による「山家集」に、
「いちごもる うばめ媼の かさねもつ このて柏に おもてならべむ」
がありますが、これもキイチゴを指すと考えられています。

平安時代の「本草和名」や「倭名類聚抄」といった本草書に和名「以知古」として現れています。
江戸時代の本草書「大和本草」や「本草綱目啓蒙」などにもキイチゴが現れています。

■食・毒・薬
果実は甘みがあって美味しく、生食できます。葉などは有毒ではないようですが、食用にはしません。

■似たものとの区別・見分け方
キイチゴの仲間は世界に数百種があり、日本には十数種が分布します。果実はほぼ球形でツブツブになっているのが特徴のひとつです。

多摩丘陵には、このニガイチゴの他に、モミジイチゴクサイチゴナワシロイチゴの自生を確認できています。稀に、カジイチゴが植栽されています。

〇このニガイチゴでは、花が枝に上向きにつき、花色は白色ですが花径が2cmほどとやや小さく、何よりも通常は花弁が細いことで他と区別できます。

モミジイチゴでは、茎を斜上させて高さ2mほどになり、花色は白色ですが枝から下垂させることで他と区別できます。なお、葉はモミジのように5中裂しているのが特徴です。

クサイチゴでは、高さ30〜60cmと丈が低く、花は上向きに咲き花径が4cmほどと比較的大きく、花色が白色で花弁が広卵型で幅広なことで他と区別できます。

ナワシロイチゴでは、茎がツル性で這うようになることと花色が紅紫色で花弁が開かずに円錐形であることで、他と容易に区別できます。

カジイチゴでは、花は径3cmほどの白色で上向きに咲きクサイチゴにやや似ていますが、葉が他とは大きく異なります。葉は径12cmほどの掌状で大きく3〜7中裂しています。    
  
写真は「花(花弁が細い個体)」、
「花(花弁が幅のある個体)」、
「葉(花のない枝)」
「全体」と
「果実(未撮影です)」
の4枚を掲載
ニガイチゴ
ニガイチゴの花(花弁が細い個体)
ニガイチゴ
ニガイチゴの花(花弁が幅のある個体)
ニガイチゴ
ニガイチゴの葉(花のない枝)
ニガイチゴ
ニガイチゴの全体
ニガイチゴ(果実)
ニガイチゴの果実