■特徴・分布・生育環境
常緑のツル性木本で、高い木の頂まで届くほど長く伸び、太さ5cm以上にもなります。
花は春に咲き、短い花茎の先に房状(総状花序)に多くの花をつけます。花には花弁はなく淡黄白色で内側に淡紅紫色の筋が入るガク片が6枚あります。雄花と雌花がありますが、見た目ではほとんど区別できません。雌花には3本のメシベがあり、雄花には1本に見えるオシベ(6本のオシベが合着している)があります。花被片は長さ2cm以下の細い三角形状です。
果実はバナナ型で長さ8cmほどになり、秋に紫色に熟します。
近縁のアケビやミツバアケビとは異なり果実は裂開しません。
葉はやや厚く革質で、5〜7個の小葉からなる掌状複葉です。小葉は幅4cm前後、長さ8cm前後の楕円型で、葉先は円形または鈍三角形状です。葉の縁は全縁(葉の縁のギザギザがない)です。
本州関東南部以西から朝鮮半島〜中国大陸に分布します。
多摩丘陵では植栽されたものを見かけます。時に半野生化しています。多摩丘陵には自生のものはなかったと推定されます。
■名前の由来
西暦800年頃の天智天皇の時代に、大贄(おおにえ)の際にムベの果実を毎年宮中に献上していて包且(おおむべ)と呼ばれていたことから「ムベ」となったという説が有力です。
漢字名の「郁子」の由来はよくわかっていないようです。「野木瓜(やもくか)」は生薬名です。
アケビやミツバアケビは落葉性ですが、ムベは常緑なので「常盤(トキワ)アケビ」または「常葉(トキワ)アケビ」の別名があります。
■文化的背景・利用
ツルは強くて丈夫なことから、椅子や籠など、あけび細工と同様に用いられます。
万葉集にはムベを詠んだ歌はないようですが、上述の通り古くから食用にされ親しまれていたようです。知られた詩歌や文芸などにはその名は現れていないようです。
平安時代の「和名類聚鈔」に「和名 牟閉(むべ)」として現れています。江戸時代の「本草綱目啓蒙」などにもその名が現れています。
■食・毒・薬
花や茎などを刻んで天日乾燥したものが生薬「野木瓜(やもくか)」で、煎じたものに利尿の効能があるとされています。また、果実、茎や葉を乾燥させて煎じたものに駆虫効果があるとされています。
ムベの果実は、アケビ同様に食用にできます。アケベやミツバアケビの果実よりも内部の果肉に甘みあり、滋養強壮によいとされています。
また若いツルの新芽をあく抜きをして、アケビと同様におひたしにしたり、テンプラなどにします。
■似たものとの区別・見分け方
〇近縁のアケビでは、葉はムベ同様に5枚から7枚の掌状複葉ですが、葉質は薄いので、葉が厚く革質のムベとは容易に区別できます。花色が淡紫色であることも区別点です。
〇同様に近縁のミツバアケビとは、名の通りミツバアケビでは葉は三個の小葉からなることで容易に区別できます。また、花色が濃紫色であることも区別点です。
アケビとミツバアケビの果実は縦方向に裂開しますが、ムベの果実は熟しても紫色になるだけで閉じたままです。
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写真は「花(雄花?)」、「花(雄花)」、 「若い果実」、「熟した果実」 と「葉」の5枚を掲載 |
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ムベの花(雄花?) |
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ムベの花(雄花) |
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ムベの若い果実 |
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ムベの熟した果実 |
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ムベの葉 |
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