ミズオオバコ(水大葉子、水車前子)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ミズオオバコ(水大葉子、水車前子) トチカガミ科ミズオオバコ属
学名:Ottelia alismoides

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■特徴・分布・生育環境
多摩丘陵では、絶滅が危惧される種となっています。
2016年現在では、3ヵ所の極めて限られた場所でごく少ない個体数を確認できているだけです。
本州の多くの県で、絶滅危惧種〜準絶滅危惧種となっています。

2014年に、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏からのご連絡で、初めて多摩丘陵での自生を知りました。ある保全地域のある谷戸奥の水湿生地です。
その後、多摩丘陵の東南端の里山公園の保全田んぼと西北端の保全田んぼのともに極めて狭い区域でごく少ない個体数を確認できていますが、それ以外では未確認です。

沈水植物(植物体は浅い水面下)です。花は水面の上に出します。1年草です。

花期は、比較的長く次々に花をつけます。
夏の後半〜初秋〜秋の早い時期(多摩丘陵では7月〜10月初頃)に水面下から花茎を立てて、水面の上に一個の花を上向きに開きます。
花は1日花であるとされています。
花茎は水面までの深さにもよりますが、通常は10cm前後です。

花は、長さ3cm前後、花径3cm前後の漏斗型です。
花弁は3枚です。花色は淡紅色(時に白色)です。

葉は根生葉で、円形に近い楕円形で葉先は三角形状です。
大小がありますが、普通は長さ10cm前後、幅8cm前後です。葉柄は普通5cm前後です。
葉は水面下にあり、放射状に広がります。
普通は多くの葉が重なっていることが多く、水面下であることもあって確認は結構難しい。

果実は、細い紡錘型で熟すと裂けて小さな種子を数多く出します。
観察できた個体数が少ないので、未確認ですが果実は水中で熟すようです。

水深が深いなど環境条件によっては、葉が大型になり、長さ20cmほど、幅15cmほどの大型になります。   
このような大型の個体を変種としてオオミズオオバコとすることがあります。

本州〜九州、東アジア〜東南アジアやオーストラリアの暖温帯に広く分布します。
多摩丘陵では、1960年代ごろまでは、比較的多くの田んぼや谷戸奥の水湿性地に自生があったと推定されます。
水田耕作が機械化されて深く耕起されることが普及し、また溜め池や小川などがコンクリート化されたこともあって、1年草が生育することが困難になったことで地域的な絶滅危惧種となっています。
2016年現在では、上述の通り多摩丘陵では3ヵ所のそれぞれごく狭い区域で確認できているだけです。

■名前の由来
「ミズ」は「水」で水湿性地に自生することからです。
「オオバコ」は、葉の形態や葉を放射状に広げる様子が、乾いた小道などでよく見かけるオオバコに似ていることからです。
ただし、上述の通り葉は水面下であることもあって確認は結構難しい。

■文化的背景・利用
「ミズオオバコ」としては、知られた詩歌などには詠われていないようです。
江戸時代の貝原益軒による「大和本草」、また「本草綱目啓蒙」などの本草書にその名が現れています。

■食・毒・薬
薬用に利用することは記載・報告されたことはありません。
有毒であるという記載・報告も、これまでは確認できていませんが注意すべきです。
食用にする、あるいは食用にできるという記載・報告もありません。地方によっては食用にするということですが、確認できていません。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵には、ミズオオバコに似たものはありません。
近縁(別属)のトチカガミでは葉は水面上に出ていて、また、花も小さい。    
  
写真は「花」、「花2」、「葉と花」、
「一時的に水上に現われた葉」と
「一時的に水上に現われた果実」の5枚を掲載
ミズオオバコ
ミズオオバコの花
ミズオオバコ
ミズオオバコの花2
ミズオオバコ
ミズオオバコの葉と花
花の左側に暗緑色の葉
ミズオオバコ
ミズオオバコの葉
水位の低下により一時的に出現
ミズオオバコ
果実:左側の濃褐色の紡錘型
水位の低下により一時的に水上に