マヤラン(摩耶蘭)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

マヤラン(摩耶蘭) ラン科シュンラン属
学名:Cymbidium nipponicumまたはmacrorhizon

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■特徴・分布・生育環境
町田市の松本氏からのご報告でやっと自生が確認できました。それまで数件報告がありましたが、確認に至っていませんでした。

その後、東京都の中島氏からお知らせとサガミランやサガミランモドキなどについても解説いただいて、他の場所での自生も確認できました。

環境省指定の絶滅危惧TB類(EN)の植物です。多摩丘陵でもめったに見かけません。

野生のランの仲間で、シュンランの仲間(同属)ですが、この仲間には珍しく菌類に寄生して生活する菌従属栄養植物、いわゆる腐生植物です。そのせいか前年に確認できていても、かならずしも本年もその場所に生えるとは限りません。
しばしば常緑広葉樹林の林床に自生するとされますが、落葉広葉樹林の林床にも自生することがあります。
  
夏に、高さ10〜30cmほどの花茎を直立させて茎頂に2〜5個の花をつけます。
腐生植物なので葉はありません。秋にも二度咲きするという報告もあります。

花色にはやや変異があり、通常白色で唇弁や側弁に濃紅紫色の条や斑点があります。
花の後背部の3枚の細いガク片が目に付きます。しばしば、横に張り出している2枚の細長い側ガク片にも紅紫色の条が入ります。
2枚の側ガク片と1枚の背ガク片は細長く長さ2cmほどです。唇弁(中央部分の下側の花被片)はやや前に突き出していて長さ1.5cmほどあります。

学名(属名)の「Cymbidium:シンビジウム」から判りますように、よく園芸栽培されるシンビジウムの仲間です。

このマヤランには以前には「サガミラン」の別名がありました。ところが近年、マヤランの濃紅紫色が部分が全くない白花のものをマヤランの品種として「サガミラン」と呼ぶようになっています。
ところが、同じく白花で花がやや小さく花色がやや緑色を帯びるものに「サガミランモドキ」の名が与えられていました。
インターネット上などでは、最近ではこれらを相互に品種とするなど混乱が見られます。
近年、花がやや小さく花色がやや緑色を帯びた白色の種類を独立種とする考え方があります。

関東地方南部以西に分布します。
多摩丘陵では、常緑樹林や時に落葉樹林の林床にごくごく稀に見られますが、2013年現在ではこの30年ほど前から自生地はごく少なく個体数も少ないので、めったには出会えません。ただ、人の営為に比較的近い場所に自生することが多いようです。

■名前の由来
神戸の摩耶山で最初に確認されたので「マヤラン」です。

■文化的背景・利用
万葉集も含めて知られた詩歌や文芸などには、その名は現れていないようです。
多くの本草書などにもその名は現れていません。

腐生植物なので栽培はできません。

■食・毒・薬
有毒であるという報告はないようですが、注意が必要です。また、食用にも薬用にもしません。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵に似たものはありません。
ただ、花はシュンランやその仲間(同属)にやや似ていますが、マヤランでは花期に葉がないことで容易に見分けられます。
白花の種類の名、「サガミラン」や「サガミランモドキ」との間の相互関係は上述の通りです。
ここでは、花がやや小さく花色がやや緑色を帯びた白色の種類をサガミランモドキとして独立種としています。    
  
写真は「花(1)」、「花(2)」と「全体」の3枚を掲載
マヤラン
マヤランの花(1)
(町田市松本氏提供)
マヤラン
マヤランの花(2)
マヤラン
マヤランの全体